ペンソー

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのペンソーのレビュー・感想・評価

3.9
架空の冷戦を舞台にしたS・キューブリック監督のブラックコメディ作品。
なかなか架空の冷戦という設定の作品はないと思うから面白かった。

米空軍の将校の独断によりアメリカがソ連に対して核兵器を行使するに至った冷戦。
核攻撃まで残された時間はあとわずか、アメリカの首脳陣はなんとかして核攻撃の応酬となる米露開戦を防ぐ方法を模索する、というお話。

この作品が製作されたのは60年ほど前で、時代は冷戦真っ只中というのがすごい。
オープニングで「これはフィクションであり、米軍はいかなることがあってもこのような事態は招かない」という注釈が長々と流れるのが面白い。

冷戦を徹底的に皮肉った演出の数々。
「核の抑止力」により米露の軍拡競争が熾烈を極めた冷戦時代、彼らは核兵器を量産しながらも、決して使うことはない。
その核兵器がいざ使われるとなると核攻撃の応酬になることはなく、米露があっさりと手を組む。
もはやなんのために核兵器を製造していたのか、抑止力として製造しても、使われればなんの意味もなさなくなるという演出は、実際に使われたとしてもそうだったのかなと感じた。

ストレンジラブ博士の優生思想やヒトラーの敬礼、アメリカに付き従うイギリス、心の中では自分たちを一番だと思っているアメリカなど、国際社会を皮肉った演出は観ていて面白かった。

あくまでもコメディ作品なのでふざけた演出も多く、ミサイルに乗ってそのまま落ちていくパイロットのシーンはおふざけの極みという感じ。

一人三役をこなしたP・セラーズという俳優、全く気づかなかった。

"2001年宇宙の旅"よりは断然分かりやすい内容だったのではないだろうか。
キューブリック作品をぜひとも制覇したい。
ペンソー

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