りっく

明日の空の向こうにのりっくのレビュー・感想・評価

明日の空の向こうに(2010年製作の映画)
3.5
本作は3人の子供たちを中心とした「ロードムービー」として展開していく。特に1番年下のペチャに寄り添った視点になっている。年上の2人は国境を目指すこの冒険から、彼を置き去りにしようとする。そこから子供特有の遊戯性、あるいは兄弟愛が浮かび上がるが、何といっても3人のじゃれ合いが物語の推進力となっている。やんちゃさや腕白さは言うなれば彼らなりの処世術でもある。その姿が実に可愛らしい。だが、この旅路で彼らが食料に困っている様子もなく、疲れて歩けない素振りも見せない。中盤までは「過酷なものを極力見せないようにする」演出に戸惑いを感じてしまう。
 
しかし、その演出には理由がある。やっと目的地である国境に辿り着いた3人。そこには夢や希望が満ち溢れているはずであった。だが、3人を待ち受けていたのは、この冒険の旅路よりもずっと過酷な現実である。ここで、警察担当者の視点と観客の視点が重ね合わせられる。この子たちを何とか助けてあげたい。だが、それを法律が阻んでしまう。八方ふさがりの状況下で、子供たちの「おねだり」の視線が胸を痛めつける。だが、それでも子供たちはいつまでも悲観はしない。車中の子供たちの笑顔に、観客は救われることになる。『鶴は翔んでゆく』という歌に合わせて、まだまだ未来は開けているという希望が残されているのだ。

本作で特筆すべきは、アルトゥル・ラインハルトによる撮影だ。子供たちの表情のドキュメンタリックな切り取りかた。夜空の表情の切り取りかた。風景や屋内の画の切り取りかた。それらを観るという一点だけにおいても、一見の価値がある作品だ。

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