ドロタ・ケンジェジャヤフスカ監督3作目。
ベルリン映画祭で青少年部門のグランプリや平和映画賞を受賞した今作。
ロシアの小さな街で暮らす、貧しい3人の少年、リャパ、ヴァーシャ、ペチャが、よりよい暮らしを目指して、ロシアの国境を越え、ポーランドに向かう。
生きようとするために、1番幼いペチャは自分の容姿の可愛らしさを自覚しながら、おばさんに「きれいだね」なんて言って、パンをもらう。一方で、テディベアを抱き締めるペチャ。そんなペチャに冷たくもしながらも、ペチャが寝ている間、彼を抱き締める兄ヴァーシャ。彼の目線の先には赤子に母乳を与える母の姿。そんな2人を何も言わずに見つめる、1番年上であろうリャパ。それぞれたくさんのものが欠けていながらも、その存在を補うように、傷つけあったり、笑いあったりしながら、小さな歩みをひたすらに進める。
まだそれぞれが幼いのに、足手まといと面倒くさがっていても、1番小さな存在を守ろうとする姿に、これが本当ならばどうにかしたいと思わずにはいられない。
「王様になって帰る」と言った彼らの笑い声はどこまでも尽きない。笑うしかない。どうにかしたいと思うけれど、どうにもできない、映画の中の大人、私。私は、砂糖のパンを持ったペチャと変わらない年頃の女の子よりも何もできていない。果てしなく弱い自分と彼らは、ペチャが言うように、「同じ空」の下で生きていて、世界のどこかで彼らの止められない、切ない笑い声は響いている。