東ベルリンから来た女の作品情報・感想・評価

「東ベルリンから来た女」に投稿された感想・評価

紫

紫の感想・評価

3.1
色々と衝撃的なことは発生しているのに、淡々と物語が進む。でもその丁寧に積み重なったものが、静かだがなんとも言えない味わいを醸し出していると思う。大人が丁寧に観る作品だと感じた。
カツマ

カツマの感想・評価

4.0
運命は車輪のように回りゆく。それは強風に煽られカラカラと音を立てては、カチカチと右に左にメトロノームの振り子のごとく揺れ動く。彼女は境界線の上に立ち、移ろいゆく愛の所在は掴めないまま。射抜くような瞳の先が見つめているのは、究極の選択とも言える強き心の現れだった。それは閉ざされた国の片隅にあった小さな愛の物語。

今年の初頭には最新作『未来を乗り換えた男』も公開されたばかりの、クリスティアン・ペッツォルト監督が、ニーナ・ホスと5度目のタッグを組み、ベルリン映画祭では銀熊賞(監督賞)も受賞、監督の代表作と呼べる作品だろう。ベルリンの壁崩壊前の東ドイツを舞台に、二つの恋の合間で揺れるバルバラの心の機微を、僅かな表情の変化や少ないセリフ、叙情的なカットに偲ばせた、凛とした大人のドラマを作り上げてみせた。

〜あらすじ〜

ベルリンの壁崩壊前の1980年、そこは東ドイツの片田舎の病院。東ベルリンから左遷されてきた医師バルバラは、常にピリピリとした緊張感を身に纏い、周りと打ち解ける様子もない。そこで同僚の医師アンドレは彼女を何かと気にかけるも、すげなく無視されてしまう始末であった。
そもそもバルバラは西ドイツへの出国要請を却下され左遷されてきた、政府からすれば要注意人物。彼女の住まいにも秘密警察のガサ入れが入るのが日常茶飯事となっていた。
それでもアンドレは何とか彼女の気を引こうと話しかけるも、そのたびに冷たい反応を返されてしまい、取り付く島もない。そんな最中、バルバラとアンドレの元へ、矯正施設から逃げ出した前科を持つ少女ステラが髄膜炎で緊急搬送されてきて・・。

〜見どころと感想〜

淡々としながらもベルリンの壁崩壊前の東ドイツの現状を示唆する舞台設定が徹底されている。西側への出国は難しく、バルバラのようにベルリンから飛ばされ、まるでスパイ扱いされるかのような非人道的な立場へと追いやられることになる。
中盤から物語の中枢に切り込んでくるステラの入所する矯正施設の過酷さもまた、社会主義国家東ドイツの闇の一つだろう。
だが、この映画はそれだけではなく、社会主義国家を体現する秘密警察の人間もまた人間なのだ、ということも暗示させる描写がサラリとだが印象的なシーンとして語られている。

『あの日のように抱きしめて』でも共演しているニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトだが、特にニーナの変幻自在の演じ分けが見事であった。『あの日のように〜』の夫を追いかける女性像とは大きく異なり、今作では煙草の似合う芯の強さを感じさせる、美しくも逞しい女性像を演じ抜いた。
東ドイツの闇を感じさせるクリスティアン・ペッツォルトの作風だが、ラブストーリーとしても感傷的な陰影と共に忘れ得ぬ余韻を残してくれる。この作品もまた、自分の中ではロマンチックな終わり方だったのかなと思いました。

〜あとがき〜

自分の趣味にバッチリと合う監督クリスティアン・ペッツォルトですが、今作もまたどストライクでした。説明の少なさや、さり気ない会話の中から設定を導き出す必要があるのですが、そんな豪快な省き要素もまた理解できるレベルで描かれているので、分かりづらくはない作品ですね。

今作では強き女性像を演じたニーナ・ホスですが、その立ち姿にすっかり魅了されてしまいました。ペッツォルト監督と彼女の過去の共演作をもっと観たいですが、ソフトとしては見つからないので、いつかリバイバル上映などしてくれる機会があればいいなぁと思いますね。
Yukiko

Yukikoの感想・評価

3.9
2019年3月22日
『東ベルリンから来た女』 2012年ドイツ制作
監督、クリスティアン・ペッツォルト。

1980年、夏。
ベルリンの壁崩壊の9年前。
東ベルリンの病院から左遷されて、東ドイツの田舎の病院に
勤務することになった女医バルバラ(ニーナ・ホス)。
同僚の医師アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)はバルバラ
に親切にするが、バルバラは頑なに拒む。
バルバラの西ドイツの恋人との密会で、バルバラが西側へ
出国する日程が決まる。
が、同じその日に、バルバラが担当する患者の開頭手術の
日程と重なった!


ニーナ・ホスさんのスタイルの良さ!
椅子に座った時、長い足を揃えて横に流したそのポーズの
きれいさ!
自転車のペダルをこぐ長い足!
大きな目👀
横顔が完璧に整っている、知的美人。
薄手のカーディガンがよく似合う。
私は初めて知る女優さんですが、有名らしい。

出国するか留まるか。
自分のことが優先か、患者のことが優先か。
医師としての仕事か、それとも恋人か。
……バルバラが何をどのように考えて選択するか?

アンドレの立ち位置が実にいいです。
患者優先で、迷いがない。
周囲の人にも誠実で。

ラスト、アンドレ役のロナルト・ツェアフェルトさん、
目で演技してた。
目が微笑んだ♡
目力の強い主人公。バルバラのクールさが田舎町の風景に美しく映る… 美しい横顔が画面に惹きつける。ジャケットとタイトルで観てしまう映画だが、ただ彼女に魅入ってしまった。同僚の彼の優しさも、なんとも言えない良さ。静かな映画だが、バルバラの葛藤がしみじみと伝わってくる。
1980年、それ程昔ではない。9年後には壁が無くなる… 戦争が終わり、35年も経っている。この前年、大学生だった私は、2カ月程だが自由に欧州の旅をしている… それなのに、東側ではこれが現実だった。
9年後のバルバラと少女が、すごく気になる…
MohnTesla

MohnTeslaの感想・評価

4.1
田舎道を自転車で走るブロンドの女性
ザワザワと強風で揺れる木々が彼女の揺れる心と東ドイツの実情に対する殺伐とした感じを表しているようで鳥肌がたった
この映画の魅力はそんな中凛々しく自転車を漕ぐ主人公バルバラの逆境に対する真摯な姿勢と医者の鏡のような良心をもつアンドレの正義感に似た優しいバルバラへのアプローチだと思います
でもラブストーリーとは言い難いところがまた連合国統治時代の東ドイツという舞台背景を際立たせていて良かった
それに私の勝手なドイツ人女性のイメージにバルバラがぴったりはまってました
クールなテンションでとても論理的なところが好感もててかっこよくてとても観やすかった
「海は嫌いなの、また明日」のバッサリな断り方は効果的過ぎるし
言い返す言葉が見当たらないアンドレの顔と「さよなら🙁」が可哀想でくすぐったい

題名から勝手に「"西ベルリンに"東ベルリンから来た女」って思って見始めてたから連合国統治時代のドイツの事情を知らないと、もしくは想像して補わないと置いていかれるストーリーなのにさらにややこしくしてしまったバカな私☺️

「ベルリンの壁」と言えば誰もが知ってるけどまさに資本主義VS社会主義の経済対決が1つの国で実験場のように行われていた感じが歴史って本当に面白いなって思います
でも面白いで済ましたらいけない部分があって
それは人間の歴史には犠牲がつきものってことで
本作では社会主義側の東ドイツが舞台
まさかここまで殺伐としてるとは思わなかった
主人公の経歴もあるからだろうけど作業所の実態とか全く知らなかった
「東から西へ逃亡する人々」という社会の教科書の一文のさらに奥深く
東側のずさんな実態を少し知れます

〜以下ネタバレ〜

そういえばレビュー書いてて思ったけど
最後のシーン「海は嫌いなの」って言葉何気にキーワードになってる気が
あと「え、ちょ。これで逃げるの????"ボート"って言ってなかった?真っ黒のおじさんとこの心細いエンジン音なんなん??」ってなったのと
ステラの「バルバラ!」が「(ほんとに大丈夫これ?!)」に聞こえた人は
私以外にもいるはず

あとララランドもそうだったけど目を合わせあって言葉のいらない感じの
2人にしかわからない何かを共有し合った顔で終わる終わり方大好き
のん

のんの感想・評価

3.3

この時代って、私にとってはまだ「過去の歴史」と言うには近くて、かと言って当該地域に暮らしていたわけでも関心を寄せていたわけでもないので、今作を観ている自分の立ち位置に戸惑い。

で、結局のところ、バルバラに惹かれる同僚の医師が好み(ロナルド・ツァフェルト)で、そっちにメロメロ。
ラタトゥイユが食べたくなった。
無

無の感想・評価

3.3
亡命を企む一人の女の心の葛藤を描いた1980年のドイツを舞台にした苦く切ない物語。
ニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトの「あの日のように抱きしめて」と同じ監督と主演コンビによる人間ドラマなのかラブストーリーなのか前回に引き続きジャンルの線引きが曖昧な話。

前回も邦題とジャケ写の意味深な所に惹かれたが、今回もそこが気になるので鑑賞。
相変わらず華奢な女と画面からはみ出さんばかりの恵体男(ラッセル・クロウ似)のカップルの体格差と同じぐらい何か噛み合わない二人の関係にはイラッとするし、話の内容もあの日のように~より分かりにくいけど、全体的にはこの作品の方が好きだ!
映像が明るめで登場人物の感情があまり読めない、セリフが少なくて間と間で語るような演出も良く、風に揺れる草や鳥の鳴き声といった自然の音を引き立たせる独特の雰囲気があるのでこういう作品が大好きな人がいるんだろうなというのはなんとなく分かる。
フランス映画とドイツ映画をミックスしたような風合いでレトロなバスやインテリアがおしゃれ!
題名で観たくなる映画
mtmt

mtmtの感想・評価

3.5
クリスティアン・ペッツォルト監督作品初鑑賞。舞台は80年代初頭の社会主義体制下東ドイツ。シュタージの目を盗んで国外脱出を図る東ベルリンから地方に左遷された女性医師が主人公。サスペンスではあるが当時の監視社会と医療現場、その中での人間性が描かれている。登場人物が概して表情に乏しいのが印象に残った。
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