東ベルリンから来た女の作品情報・感想・評価 - 4ページ目

「東ベルリンから来た女」に投稿された感想・評価

ぱなお

ぱなおの感想・評価

3.0
景色は美しいのに、絡みつく社会主義国の目が怖い。自宅に帰ってからも、外からの物音にずっとビクビクしながら生活する女性。頑ななまでに心を許すこともないバルバラが、料理は苦手と言った時にライザー先生に一瞬見せた笑顔が印象的でした。ベルリンの壁崩壊前の東と西の背景をもっとよく知っていれば、もっといろんなことが見えたかもしれないな。説明台詞がないのでちょっとわからず、序盤にあらすじ読みました。
この女性の神経質さ!圧倒されました。

1980年、東ドイツのバルト海沿岸にある小さな町の病院に、女医バルバラが赴任してくる。西ドイツへの移住申請を出したため、東ベルリンの大病院からこの地に左遷されてきたのだ。
そんな彼女に、医師ライザーは親切に接するが、彼女は邪険に反応するばかり。 バルバラは、西ベルリンに住む恋人ヨルクが用意した逃走資金を受け取って隠蔽し、西ドイツへの逃亡を企てていたため、常に神経を尖らせていた。
ある日、矯正収容施設から逃亡して藪の中に隠れていたため、髄膜炎を発症した少女ステラが搬送されてきた。ステラはバルバラにのみ心を開き、他の医師からの関わりを拒否する。 血清により回復し、ステラは収容所に直ちに送り返された。
病院で勤務していく中で、次第にライザーに惹かれていくバルバラ。恋人ヨルクとの狭間で彼女の心は揺れ動く。 バルバラが西ドイツに出国しようとした瞬間、再び逃亡してきたステラが彼女を訪ね、一緒にいてと叫ぶ。
西側での新生活か、医師としての責務か。決断の時が迫る…。

バルバラの視線が鋭すぎて、観ているこっちが「見られている」ような感覚にさえ陥る。 うわぁ、これはきついなと思った。
相手役のライザー医師は、対照的に優しくて、包容力たっぷり。それだけに一層彼女の神経質さが際立つ。
ただこの映画、不思議と目を離せない魅力があって、全く退屈しない。
最後の彼女の決断はもとより、感情の変化を表す細かな機微や、東ベルリンの町並みや歴史もよく表されている作品でした。
ベルリンの壁崩壊前の東ドイツを舞台に、田舎に左遷された無愛想な女医の心が、地元の人々との交流により少しずつ温められていく。
地味だけど、映像が綺麗で癒される映画。
akrutm

akrutmの感想・評価

4.0
ベルリンが東西に分断されていた時代に、東ベルリンから東ドイツの田舎町に左遷させてきた女医バルバラが、西側に脱出しようと試みながら過ごす日常生活を物静かなトーンで描いています。東ドイツのような監視社会では日常生活で接する誰もが体制側の人間である可能性があるので、周りの誰にも心を開かず黙々と仕事に徹するバルバラと、西にいる恋人のヨルクと会っているときだけの生き生きとしたバルバラの対比が、まさに当時の東ドイツの状況を物語っています。最後のバルバラの決断はいろいろと解釈することができると思いますが、個人的には、医師としての使命を優先したけれど、西側への脱出はあきらめていないと解釈しています。最後のシーンでもアンドレに対して笑顔を見せなかったのは、そのような意思を強く表しているように思えます。

ところで、バルバラを演じたニーナ・ホスをどこかで見たように思いながらこの映画を見ていましたが、調べてみると同じ監督の作品である『あの日のように抱きしめて』(こちらはずいぶん前に見たのですが)に出ていたのですね。気づかなかったけど、アンドレ役のロナルト・ツェアフェルトもいっしょに主演しています。ちなみに、個人的には『あの日のように抱きしめて』のほうが心を動かされました。
「Mahlzeit」が和訳では「こんにちは」とされていて、なるほど、と思った
全体的に語りは少ないため、感情を読み取ろうと必然的に役者さんの顔のパーツひとつひとつを注視することになる
目線や口元の微妙な動きですべてを伝えてくるからすごい俳優さん女優さんだと思った
「修理代は西のタバコだな」はたぶん皮肉だと思うんだけど、東西の知識が無さすぎてわからなかった
予習しておくと更に作品を楽しめたかな、と思う
勉強してからもう一度観たい
苺

苺の感想・評価

3.2
ベルリンの壁が崩壊される前の東ドイツが舞台の話。
主人公のバルバラが魅力的。
淡々としたストーリーだけど、雰囲気とかが素敵で良かった。
ラタトゥイユが美味しそうで食べたくなった。
 「グッバイ、レーニン!」など、東西対立が個人に与えてきた影響を描いた映画はあったが、「東ベルリンから来た女」はそれをさらにミニマムな領域の話に落とし込んでいる。描かれるのは「東西対立により引き裂かれた男女の悲恋」ではなく、「2人の男の間を揺れ動く1人の女」の物語だ。
 東ドイツの片田舎を舞台にしているため、冷戦などの影響を直接的な形として目にすることは少ない。時折登場する「外国製医療機器の話」や「外国人用ホテル」からその片鱗を窺い知ることはできるが。
 だがそれらの歴史的要素よりも、この映画はバルバラの引き裂かれる感情に重きを置いている。東ドイツに未練を残さないために、誰とも深くかかわり合おうとしない彼女の硬い表情は、切実な胸の内を表している。だからこそアンドレと自然に打ち解けていく様子が微笑ましくもあり、悲しくもあるのだ。
 ニーナ・ホスは、下手すると観客にも嫌われることに成り得る「嫌われ者」を繊細に演じた。彼女の心情の変化していく様をが手に取るように分かるから彼女の気持ちが痛いほど分かる。彼女が揺れ動く、2人の男がどちらも魅力的だからなおさらだ。
 ツェアフェルト演じるアンドレは単純そうに見えてとても複雑な人物だ。おおらかそうに見えて卑屈でもあり、開けっぴろげでありながら繊細でもある。微妙な心の動きを完璧に捉えているから、一つ一つの会話のシーンが偽のものとは思えない。そこにはバルバラへの一途な思いがあるからこそ、全体としての彼の方向性は一切ぶれることがなく、観客も彼の肩を持ちたくなる。
 対するバルバラの西ドイツの恋人ヨルクは洗練されていて、いかにも資本主義国家の人間だ。それでいて鼻につかないのが不思議である。おそらくバルバラとの愛し合う様子が、2人とも心から嬉しそうで偽りのものには到底見えないからだろう。
 この複雑な人間関係が、彼女のバックグラウンドとともに重なり合って描かれる。残念なのは、ほとんどの人物はバルバラとしか係わり合うシーンがない。アンドレとヨルクは一度たりとも絡まないし(これが逆にバルバラの秘密となり、ドラマを面白くしているとも言えるが)、その他の脇役には生活感がまるで無い。それなのに「当局に監視される」バルバラを描くものだから、中途半端感が否めない。彼女が他人を避け、他人が彼女を嫌っている様子があまり見えてこないのだ。
 それでもバルバラを取り巻く、悲しい恋の話には胸を打たれるだろう。幸せな場面と悲痛を感じさせる場面が程よく織り交ぜられていて、ひとりの人間の視点からではあるが、東西分断が生んだ悲劇を追体験させられる。
(13年3月12日 映画館 4点)
1980年の東ドイツを舞台にした映画。ベルリンの壁崩壊の9年前。
東ドイツでも、当時、ベルリンは羨望の場所だったようである。
そのベルリンから田舎の病院に移された女性バルバラが、映画タイトルどおり主人公。
感情を表情に出さない女であるが、林の中で男と抱き合って笑うあたりは、高峰秀子演じた映画『張込み』のようであった。

その後、田舎の病院で過ごすうちにバルバラは、男性医師に好意を持ったり、作業場(拷問場)から逃げてきた少女ステラとの触れ合い、自殺未遂の少年との関わり、などのエピソードを綴りながら、淡々と温かい人間関係を描いた佳作。