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二郎は鮨の夢を見るのkmtnのレビュー・感想・評価

二郎は鮨の夢を見る(2011年製作の映画)
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東京の名店にして、ミシュラン三つ星を獲得している「すきやばし次郎」の二郎さんに密着したドキュメンタリー映画。
僕は回転寿司でもサイコー!!と思ってる方なので、二郎さんの寿司の味ってのはイマイチ想像がつかなかったけど、
それでも美味いであろうことは充分わかる。


最低金額は3万円で、メニューはおまかせのみ、
なんて初見殺しか。
よく、過去の技術の断裂なんて言葉が聴こえてくる日本社会ですけれど、少なくとも「すきやばし次郎」と言うお店に関して言えば、そう言うものからは無縁な様に感じる。
10年間修行して、やっと卵焼きを任せてもらえるという環境の中(数百回やり直しをさせられたとか)、若手の職人は「やっとオヤジさん(二郎さん)に認められたのが嬉しかった」とはにかむ。


もう寿司を握り初めて70年近くである二郎さんは、もちろん厳しい人なのであろうが、
他の同世代の方と比べると遥かにカクシャクとしている。
言葉も明瞭で、寿司を握る手も当たり前だが、とにかく流麗。
※余談だが、人気寿司漫画「将太の寿司」では寿司を握る回数が少ないほど、良い寿司職人だとか言っていたが、二郎さん及び、この作品に出てくる職人さんは普通に何手もかけて握っていた……やはり漫画の知識というのはアテにならないのである。


技術の伝承というのが今作のテーマに思う。
今作では二郎さんの息子2人がフューチャーされる。
長男の禎一さんは次期「すきやばし次郎」の店主候補。父親の技術に負けないと奮闘する日々(とは言え、実はもう作業に関しては禎一さんに任せているとのこと)。
他店の店主にまで「二郎さんが亡くなったら大変だろうね」と言われる。
作中でこんなセリフがある。
「二郎さんと同じレベルじゃダメなんだよ。二郎さんの何倍の技術になって、やっと認められる」(うろ覚え)。
なるほど、確かに。


一方の次男の隆士さんは「すきやばし次郎」の支店を任されている。
技術は長男に負けているとは思わないと語るその姿は、日本の長男・次男という概念のしがらみの難しさを感じる。
支店のコンセプトは、入りやすさだと隆士さんは言う。
「親父が握っていると入りづらいでしょ?」と笑う。


2人の兄弟と、父親。
そして寿司。
それが、なんとも日本的で美的センスの塊。
あと何より美味しそうというのがいい。
同じ日本なのに、知らないことばかり。
だからこそこういう映画を見ると嬉しい。
そんな一作です。
おすすめ!
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