GreenT

ゼロ・ダーク・サーティのGreenTのレビュー・感想・評価

ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)
3.0
オサマ・ビン・ラディンの居所を突き止め、殺害に貢献したCIA 情報分析エージェントのお話です。

ジェシカ・チャステインが演じるマヤ・ハリスは、大学出たてだけどすごく優秀だったようで、テロリストの尋問を分析するCIA エージェントとして中東に送られる。

先輩のダン(ジェイソン・クラーク)がテロリストに対して非人道的な拷問をするのを見ていられないマヤに私達観客は共感するのですが、そのマヤがみるみる内にダンのようになっていく。

その上、任務で仲良くなり友情を築いたり苦労を分かち合ったエージェントたちがテロリズムによって殺されたり、自分も命を狙われたりすることによって、マヤがオサマ・ビン・ラディン殺害に感情的に固執していく感じがすごいイヤでした。

だって、最初っからビン・ラディンを殺すために探していたんでしょ?本当にテロリズムを無くして平和を目指したいなら、生きたまま逮捕して取り調べをして、今後も出てくるであろうテロリストの対策に役立てるべき。殺害することは「911の復讐としてアメリカ人の溜飲を下げる」というスケープゴートとしての目的は果たせるかもしれないけど、テロリズムを無くす最良の方法だとはどうしても思えないんですもん。

『ザ・レポート』でもそうだったけど、CIAは「なにか目に見える成果を出さないと」っていう焦りが行動の基盤になっていないか?って思わされるし、『ゼロ・ダーク・サーティ』では、主人公が復讐に取り憑かれてしまって、それほど信憑性があるとも思えない情報を「100%確実」と言えてしまうのは、普通の感覚じゃないなと思った。

ビン・ラディンの死体を確認したときも、「これで目的を果たした」と本気で思えたのか、なんとも言えないシーンだった。

10年近くもビン・ラディンを追い続け、目的を果たして故郷に帰れることになったけど、たった1人で大きな飛行機に乗せられて「どこへ行きたいの?」と訊かれて答えることが出来ず、涙を流すマヤで幕を閉じるのは、あれほど一生懸命がんばったのに、達成感もなければなにもない、虚しさを表現しているんだと思った。
GreenT

GreenT