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ローラのmoronのレビュー・感想・評価

ローラ(1981年製作の映画)
3.7
登場人物たちの役割はあまりにもはっきりしていて退屈なほどだけれど、スクリーンに映るものに当世風の何かを嗅ぎ取ってしまうからたまらない。
フォン・ボームは赤き頽落の光に飲み込まれてしまうが、それは時間の問題だったと思う。フォン・ボームを待ち構えていたのは、シュッケルトでもローラでもなく、街の隅々に染み渡った悪徳だった。誠実さも青春も共産主義の亡霊も、資本主義と手を取り結んだ快楽主義の前では為す術がない。

なぜだか、フィッツジェラルドの「氷の宮殿」を思い返した。あれは、アメリカの南部ののどかながらも退廃的な気風が、冒険と進歩を望む人間を捉えて離さない物語だった。そこでは、輝かしく祝祭じみた世界が気怠げで湿度の高そうなそれへと姿を変える。
およそ『ローラ』とは関係のない作品だけれど、僕の中では琴線の触れ方が同じだったのだと思う。
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