たつなみ

アンチクライストのたつなみのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
3.0
ラース・フォン・トリアーと言えば、その昔『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を感動モノと勘違いしてヨメさんと観に行き、2人ともゲンナリした気持ちで映画館を後にした思い出がある監督である…😥

どうやらこの監督は人間の持つあらゆる欲望や傲慢さ、聖書的に言い換えると『原罪』を描きたい人なのかなぁと思う。
本作のタイトルが『反キリスト』という所からしても、神に反抗した(取って代わろうとした)人間の愚かさと恐ろしさを様々なメタファーと強烈な手法で描いている。

セックスの快楽に溺れ、息子が窓から転落しそうになる姿を見て見ぬふりをした妻はその”罪“に苛まれ、罰を受けることを渇望する。
セラピーの為に夫婦で向かう先が『エデン』という所からして、妻は蛇にそそのかされて知恵の実を食べてしまった『イヴ』のメタファーと思われる。
息子を失った悲しみを論理的に乗り越えようとする夫は、知恵の実を食べた罪を責任転嫁した『アダム』を表しているのだろう。

それにしてもとにかく全編不穏な雰囲気で観ていてもの凄く居心地が悪くなる。
ひたすら夫婦2人の苦悩が続き、途中から妻の息子への虐待が明らかになった挙句に凄惨な”殺戮“にまで至る。
問題のあのシーンは『うぁ〜〜! 痛てェェ〜〜!』と悲鳴を上げてしまった。
あの行為も彼女にとっては『罰』ということなのだろう。

登場人物はS.ゲンズブールとW.デフォーのみ(あと小ちゃい男の子か)
S.ゲンズブールは本当に狂っていってるとしか思えない迫真の演技。
カンヌで彼女が女優賞を受賞したのも納得。
そしてW.デフォーの悪人顔をもう観たくないと思える程堪能出来る(笑)

しっかしよくこんなドロドロな話を2時間も続けられるよなぁ。
訳がわからんけど不思議と最後まで惹きつけられるのはこの監督の手腕と言わざるを得ない。
でも観たあとはドッと疲れが出たわ…😅