Osamu

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯のOsamuのレビュー・感想・評価

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悔しい気持ちでいっぱいになった。

名張毒ぶどう酒殺人事件に関する長年の取材に基づく再現ドラマを軸にしたドキュメンタリー。

名張毒ぶどう酒事件とは、1961年に起きた、村の公民館で行われた宴会に出されたぶどう酒に農薬が入っていて5人が死んだ事件。1964年の一審で無罪となった容疑者・奥西勝さんは1969年の二審で一転死刑判決を受けた。以後、奥西さんは半世紀を死刑囚として過ごした。物的証拠は乏しく、自白をほぼ唯一の証拠としており、その自白も強要されてしたものと弁護団は主張。

同じ事件を扱っている同じ東海テレビの『ふたりの死刑囚』でも司法の縦社会の横暴について指摘しているが、改めて憤りを感じた。

この作品では加えて、奥西さんの特別面会人や弁護団団長の喜びや悲しみを描いている。彼らの努力が、正義とは異なる論理にかき消されてしまったと思うと悔しくてならない。

事件当時の映像も出てくるが、当時は事件直後の事件現場や取り調べ現場にもカメラが入っていることに驚いた。自白直後に容疑者本人が謝罪の会見をしているのにはもっと驚いた。そして最も強烈だったのは、実況見分で村のあちこちを引き回されている奥西さんに声をかけた(叫んだのかもしれない)息子と娘の後ろ姿と彼らに顔を向ける奥西さんの表情をとらえた写真が撮られていることだ。衝撃的。

あの息子と娘はどんな人生を送ったのだろうか。

もし、冤罪であったなら、その無実の罪を負うことがなかったら、息子や娘、奥西さん本人の人生は全く違うものだっただろう。捻じ曲げられた人生は元には戻らない。検察官や裁判官の人生と同様に大切にすべき人生だったはずだ。