こたつむり

ダークホース リア獣エイブの恋のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.8
♪ いわばシャイで
  ひきこもりの日常を返上したい
  だって そうさ そうさ そうさ

痛い痛い痛い痛い。
とても痛い物語ですね。相も変わらずのトッド・ソロンズ節。いやぁ。本当に痛いです。

主人公は三十代半ば。
実家で親と同居し、仕事も父親の仕事を手伝っています。そんな状況で“我が身を厳しい場所”に晒す筈もなく。業務中にネットショッピングを楽しむ毎日。

実売店舗でも同じ。
トイザらス(なぜか社名にモザイクがかかっているのが笑えます)に行ってフィギュアを購入。そんなコレクションが自室にズラリと並んでいました。

そんな彼に恋人はいません。
でも、興味ないわけではないのです。
友人(がいるかどうかは分かりませんが)の結婚式に出席したときに、自分と同じように周りの空気に馴染めない女の子を見つけたのでアタックする…というのが序盤。

この展開が痛いですねえ。
独り立ちして当然なのに、ぬくぬくと殻の中で“ぬるま湯”に浸っている…そんな状況は見ていて痛いです。というか、愚息が同じ道を歩まないか…とても心配です。

ぶっちゃけた話。
誰だって通る道だと思うんですよ。
ただ、違うのは早いか遅いかだけ。社会人までに通り抜ければ良いのです。

でも、本作の主人公は留まったまま。
この“痛さ”を嘲笑えるほど、僕は厚顔無恥(=本作の邦題を考えた制作会社)ではないので、とてもしんどい物語でした。

まあ、そんなわけで。
アメリカ版『俺はまだ本気を出していないだけ』。
唯一の救いは、現実を模した物語だけど現実ではない…ということ。要はこんな“痛い”状況に陥らなければ良いのです。本作はある意味で反面教師。言い訳に満ちた人生になる前に観た方が良いです。

最後に余談として。
ヒロイン役に見覚えがあると思ったら『ストーリーテリング』に出演したセルマ・ブレアでした。どうやら、監督さんの中では同一人物として扱っているようですね。これが所謂、トッド・ソロンズ・ユニバースなんでしょうか。ほへー。
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