FumiyaIwashina

風立ちぬのFumiyaIwashinaのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
5.0
宮崎駿監督、長編最後の作品にして最高傑作。こんな偉大な作品を残してくれたことに心から感謝を述べたい。
今作はストーリー自体単純だけれども、一度では良さがわからない作品だと思う。自分自身、初鑑賞時は二郎の声が変だなとしか感じなかった。しかし、何度も観るうちになぜ庵野さんに依頼したかがわかってくる。そして、それに比例して作品の素晴らしさがわかってくるはず。ただ、宮崎監督の趣味が全開で、ジブリでは珍しく完全に男目線だから、万人向けではないかもしれない。
一番の魅力は主役の二人で、ジブリの中でも断トツで素敵なカップル。特に菜穂子は非の打ち所がない。おしとやかで、あたたくて、聡明。二郎にはきれいなところだけを見せようと努める。泉での再会、契りを結ぶシーンはとてもきれい。また、布団の中から手を繋ごうとしたり、添い寝する二郎に布団をかけるところは本当にかわいい。
二郎に関しては僭越ながら自分を重ねてしまう。他人からは優しく穏やかな人と思われるが、妹からは薄情と言われ、上司からはエゴイズムを指摘される。おそらくそのどれもが当たっていて、二郎はそれでも夢を追い続け最高の飛行機を作ってしまう。
そして、全力で生きてきた男が最終的には全てを失う。そんな男に「生きて」と声をかける菜穂子の優しさには胸が締め付けられる。自分もこれから多くのものを失うだろう。しかし、どんな困難に直面しようと生きねばならない。
「風が立つ。生きようと試みなければならない。」ありがとう、菜穂子。ありがとう、宮崎監督。