yukihiro084

世界にひとつのプレイブックのyukihiro084のレビュー・感想・評価

4.8
全ては呼吸なんだ。

呼吸を整え、呼吸をあわせて、
昨日まで知らなかったステップで
一歩前に踏み出す。

3度目。これで3度目。
最初観た時は風変わりたラブコメだな
って、思って、2回目観た時は、
なんか、もう、好きになっていた。

ブラッドリー・クーパー演じるパットは、
妻の浮気が原因で心を壊してしまった。

そもそも、失恋で心を壊わないことって
あるんだろうか?まぁ、いい。
ある食事会でティファニーに出会う。
ティファニーもまた心を壊してしまって
いた。描かれているテーマはシリアスだが
この食事会の、処方されたクスリの話で
2人が意気投合するところは笑える。

ジェニファー・ローレンスは
撮影時、21歳だったと聞く。
21歳の女優があのロバート・デニーロを
言い負かすシーンがある。
けっこうな数の女優が候補になっていた
ティファニー役を、ジェニファー・
ローレンスは本当に本当に自由自在に
魅力的に演じていた。声色を変え、
中指を立て、ドスをきかせ、
早口でまくし立て、ふいに見せる笑顔。
あぁ笑顔。そりゃ反則だろ。
ザ・ファイターのエイミー・アダムスも
そうだったが、ラッセル監督作の
女優はみな、いい感じで垢抜けない
キャラクターにちゃんと仕上がっている。

ラッセル監督は、まず家族を描く。
風変わりな家族を。巧い。
そして母親を魅力的に描く。
アメリカン・ハッスルも、
ザ・ファイターでも、インパクトの
ある家族や母親を登場させている。
名物と言っていい。今度はどんな
母親かな、と楽しみにしてしまう。

今作のパットの家族もインパクトが
あった。ノミ屋の父親はアメフトが
命だ。ブチ切れるポイントがいちいち
おかしいのが、可笑しい。
デニーロ良かった。最高だった。
母親役のジャッキー・ウィーバーも
いい。やはりラッセル監督の母親役の
チョイスは素晴らしい。

ブラッドリー・クーパーは
イケメン扱いされている俳優だが、
よく考えたら、まともな役なんて
これまであったんだろうか?
ほとんど、ちょっとオカシイ役しか
やっていないんじゃないか?
今作のブラッドリーはアップの顔が
もうなんか、オカシイ。
どこを見ているのかわからない目線、
感情の見えてこない表情と目の力。
いや、怖い怖い。アップ怖い。

危うい精神状態のパットの友人もいい。
その友人の発言に、心配そうな
表情をするパットもいい。
いや、オマエもな。と、観てる側は
総ツッコミだっただろう。

2人はペアでダンスコンテストに
出場する。だが、この作品が
ラブコメでもないように、
スポーツ根性ものでもない。
甘いラブストーリーでも、
人生の大逆転ドラマでも、
自分を傷つけた者への復讐劇でもない。

この作品の原題にある(銀の裏地)は
ある諺からきている。その諺の意味は
(どんなに絶望的な状況でも必ず希望ある。)
プレイブックは、アメフトの(作戦図)の意味。
絶望を克服してゆく作戦図。うん。
その作戦に関わっているのは決して
1人ではないのだろう。
なんて素敵なタイトルなんだろう。

2人は、パットの家族や友人たちは、
呼吸を整え、呼吸を合わせて、
昨日まで知らなかったステップで、
それぞれが一歩前へ踏み出す。
まずは、新しい一歩を。

それがいい。それがたまらない。
yukihiro084

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