海

キャビンの海のレビュー・感想・評価

キャビン(2011年製作の映画)
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死へのはばたき、という昆虫の変態を解明するために行われた有名な実験がある。これについて初めて読んだとき、昆虫っておおよそ、人間の作り出す「怪物」像だな、と思った。脆いのに不死的で、忌み嫌い恐れ慄かれるあの気味の悪い体の模様が神様あってこその設計だということ。数多くあるホラー映画に登場する怪物たちと、本当に上手く重なる。人間は30年、昆虫は数週間で世代交代し、人間は代わりに手にした明るさで自分たちの進化の遅さを眩まし、晦まし続けてきた。蝶の翅が神様の設計ならば、怪物の凶器を設計した人間は神様の役割を担う、このロールプレイングを愛する人たちにとったら本作のようなメタ的な視点は妨害すべきものなのかもしれないが、きっとそんな人はほとんど居ないと思う。だって誰しもが、領域の外側へとどんなに一心不乱に向かい続けても箱からは出られない、ことを知っている。観察者が居るかぎりは。これは「牛の首」にも少し似ていると思う。語り継ぐものが居るかぎり無くならない正体不明の怪談。(むしろこの箱の中に「牛の首」も居たりして!)空想が生み出す現実やら、嘘が作り出す真実やら、本来は足を持たないものがいつの間にか足を持ち歩き出す、この感じだ。目に見えない何かがわたしたちから権限を奪う瞬間だ。ホラーオタクがテンプレ展開に爆笑したり愛する化け物たちのパーティに大興奮したりして楽しむ映画…というよりは、第四隔壁の無限化を感じられる映画だった。愚かな……挑戦が挑戦を呼ぶ、それがホラー映画、でもこの「世代交代」の速さのわりに観客は懐古主義者だらけかも。なんだかんだ言ったけど、ホラー映画好きな人には観てほしい映画だし、あとはネット上に無限に転がってる怖い話が好きな人、それからSCP好きな人にも全力でおすすめできる。あとヒロインめちゃめちゃ可愛い、タイトルバックがしぬほどかっこいい。
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