adeam

愛、アムールのadeamのレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
4.0
オーストリアの鬼才ミヒャエル・ハネケに二作連続のパルムドールをもたらした傑作ドラマ。
シンプルなタイトルの通り、老老介護の状況下で紡がれる一組の老夫婦の愛の形を描いた物語です。
人間の命、そして生きること死ぬことの意味を探るテーマ設定は次作「ハッピーエンド」はもちろん、デビュー作「セブンス・コンチネント」にも通じています。
静的なカメラが長回しで映し出すのは、当たり前のように寝たきりの妻の世話をして、歌を聴かせ、傍らで語りかける夫の姿です。
前半での妻の悲観的な発言が効果的で、淡々とした日常の中に時折訪れる微かな感情の発露の度に、いつ夫の心が折れてしまうのかと緊張感が持続します。
枕を手に取る夫の手が一度わずかにためらう動きに、この上ない愛情を感じました。
孤独の淵で絶望し、追い詰められていくのではなく、家族や親切な隣人、かわいい教え子など人との関わりがあった中での結末だからこそ、それがはたから見れば歪んだ愛であったとしても、その決断には否定しようのない説得力が与えられていたと思います。
adeam

adeam