クリーム

愛、アムールのクリームのレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
4.0
こんなに重く苦しい映画は、初めてかも知れない。胸が押し潰されそうだった。誰でも歳をとるし、誰の身にも起こりうる事を美化せず、映画にしていた。特に老老介護の描写は凄い。心に残るし、色々考えさせられる作品でした。
パリに住む元音楽家の老夫婦ジョルジュとアンヌは、引退後も二人で仲良く暮らしていた。そんなある日、アンヌが発作を起こし病院へ行くと静脈硬化で手術をする事に。が、手術が失敗し半身不随になってしまいます。家に戻るとアンヌは病院に戻りたくないと言って、ジョルジュに自宅介護を約束させます。ここから、ジョルジュの献身的な介護が始まるが、一方のアンヌは、どんどん悪化して認知症も進行して行きます。本当に観ていてしんどかった。エゴなのか愛なのか。私は、映画としては正解な終わり方な気がします。




ネタバレ↓




娘のエヴァが、良く解りもしないのに父親を責めるのは、無神経でジョルジュが可哀想だった。母を思う気持ちは解るが、介護してない人が、偉そうに意見するのは違う。でもこれは、若い人達には解らないのがリアルだと思った。
どんどん何も出来なくなるアンヌの姿がリアルで、お漏らしをしてしまった時のシーンは、胸が張り裂けそうでした。あれが一番ショックで悲しく、生きていたくないと思った事でしょう。すでにトイレ介助の時点でキツイけど。ジョルジュは、妻との約束を健気に守る。生きていてくれればそれで良いと必死になり妻の心は見ない様にしていた。だけど、妻とカタコトの会話をした時、ピアノ教師で気高かった妻。尊厳を大切にしていた妻の願いを叶えようと決めました。自分の想い(エゴ)ではなく、妻の想い(愛)を選択したのです。その選択は殺人なので、ジョルジュ自身の死も付いてきます。 決して介護で苦しいから、辛いからじゃなくて、妻が望んだから。妻が生きたいと願っていたら、ジョルジュは最後まで面倒を見たと思います。
良い悪いは別として、究極の愛だと思いました。
オープニングで消防が部屋に入ると、アンヌだけが横たわっていたのですが、消防が来たという事は、ガスの匂いのためで、ガスによる自殺と思われます。
殆んどの人が自宅で死を迎えたいと思っていると思います。だけど、その願いが叶うのは、ほんの一握り。夫婦できちんと話し合っておかなきゃいけないと痛感しました。夫婦は長く一緒に生きて来て、共に依存し合っているので、ジョルジュの気持ちは良く解る。だけど、逆ならどんなに介護して上げたいと思っても現実的に厳しい。あの大きなジョルジュをアンヌが起き上がらせるなんて…。悲しい現実に恐怖を覚えます。ああ怖い。
クリーム

クリーム