音楽家夫婦である”ジョルジュ”と”アンヌ”。
弟子のピアノ演奏の講演会を楽しんだ翌朝、朝食を摂る最中アンヌは一瞬うんともすんとも言わなくなる。
病に侵されたアンヌは手術を受けることになり、ジョルジュも妻の介護生活が始まることを受け止める…。
かくも静かなお話し。
この手の話は泣かされてしまうのだろうなと思いつつ観ていたのだが、不思議と涙を流せなかった。
プロットだけ追ってみるとこれほどまでに「泣けそう」な物語であるにも関わらず、大きく感情が揺り動かされなかったことに驚く。
どうも文面に表すことが難しいこの感情に少し光を射してくれたコメントが、公式HPに記載されてある谷川俊太郎の言葉。
─── わたしたちは<映画>を観たのではない、<事実>を目の当たりにした。涙を流す余裕はない ───
私自身はあくまでも<映画>を観たという感想が残るが、この映画で描かれた愛は「よくある感動」と袂を分かつ類の愛であったのかもしれない。