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愛、アムールの655321のレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
4.2
『愛、アムール』の長回しの凄さ。
緊張感を持たせる。
テンポが遅く、静謐で老いを感じさせる。
そして、ほぼ唯一の舞台となるアパルトマンの間取りをスマートに教えてくれる。

最後のは冗談のようだけど、ハッキリと意味や意図を感じる。

冒頭、消防か警察が家に入ってきてチラと右を見る。
結局この場面では映し出されることはないが、見せてくれない右側に謎がある。
この冒頭は時系列でいうと終盤なので、この長回しの終わりが全ての結末のように思える。
だが最後まで観ることによってまた謎が増えることになるのだ。
…あの右側の部屋には何があったのだろう?と。


看護師の扱いに違和感を覚えるシーン。
まるでこの映画は肯定することはなんとも残酷なことで、否定する事が愛だと言っているようにも思える。
だが一方で夫にも介護疲れからの狂気を感じる場面でもある。

この映画全編にわたって、ミヒャエル・ハネケは明朗な答えを出してくれない。
それでも感じるこの切なさ苦しさ。
私の中での結論は、「愛は他者の理解を必要としていない」

それでも、それですらも、
この映画は娘が父のいつも座っていた椅子に腰掛け何かを想い、同時に冒頭で謎であった部屋のドアが開け放たれているショットで幕を閉じる辺り憎らしい。
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