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ベラミ 愛を弄ぶ男のひばのレビュー・感想・評価

ベラミ 愛を弄ぶ男(2012年製作の映画)
4.0
わたし不倫モノが本当に嫌いで(文句をつける為に見る当たり屋)天誅が下らないと暴れるんだけど、ベラミ、誰も愛していない。ベラミが欲しいのは成功是即ちお金だけ。あまりのクズさにすこぶる低評価だけど、それが一貫してて潔く、この世にふたつとないポテンシャルを授けられそれを彩なす姿にシンデレラストーリーを重ねてしまい、これからも頑張れよ!って応援したいくらい。その鉄壁のクズさで堂々とゲームオブスローンズの世界に入れるぞ。玉座を目指せ。
ベラミは兵役の後長く貧困に陥り、何不自由なく温かい食事、服、住居を持ち自分が恵まれていることさえ自覚がない上流階級を恨みこの世の運を恨んでいる。ベラミの貧困時代を物珍しげに食い物にし、世間知らずのベラミは注目を集め始める。時代背景には疎いのでよく知らないけど、多分どいつもこいつも貴族には愛人がいてそれが暗黙の了承になっている。なので大抵は愛人システムを理解していて娯楽になっている背景には、夫に蔑ろにされる女性やアクセサリーまたは子供を生むモノとしか思われていない事実がにじみ出ている。だからベラミがのしあがる為の道筋が実は目の前に用意されている。この為に生まれてきたんだろうというばかりに。
ベラミが目をつける女性も色とりどり。ベラミの全てが欲しい女性、ベラミの愛が欲しい女性、ベラミの体だけ都合よく欲しい女性、ベラミの才を利用したい女性…面白いのが最初にちょっかいかける女性は明らかにベラミより賢く知的で世間を知っていて自立心があり誰よりも秀でた女性。「貴方の愛人にはならない」と一発で心を見抜かれるも、良い位置をキープしたまま次々別の女性をたらしこみ最終的にはすべてを丸め込む。自分がしている非道を相手が行うことは決して許さず、裏切りには女性を武器として利用し復讐を。ひっどいのはベラミを周りのなかでは一番近い境遇から見つめ一番理解しているであろう女性に「愛なんて価値がない。知ってるだろ、君は同類だと思ってた」と言い放つこの残虐さ!おっおまえ~~~やなやつだな~~~~!!
ベラミには何もない。なんの才能もない。一つを除いて。すべてを全賭けするベラミに神が与えた天賦の才は人をたぶらかす能力だったんですよ、抜群の保証付でね。ベラミが才を意識すると人も運もねじ曲がる。「百姓だった父は教会に通っていた。でも来世なんてない。人は腐って死ぬ。だが僕は生き残る」ベラミの為に目の前にレッドカーペットを敷いた階段が用意されている。だからベラミは自信を持ってその道を歩く。悪魔のような男。だけどその筋の通った姿も心も私には美しく見えるよ。その倫理を超越した気高さに、捨てられた女性も絶望だけでなく畏怖の念を、そして実は裏で男たちを操りのし上がりを共にした一種の戦友として彼を見つめ祝福する。
最後に、ベラミって名前じゃないんですよ。『美しい友』って意味で呼ばれてるの。しかも名付け親は小さな少女。最高じゃないですか?
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