mimitakoyaki

愛してる、愛してないのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

愛してる、愛してない(2011年製作の映画)
3.9
こんな起伏のない映画ある?
ほんとになーんにも起きないんですよ。
BGMもないしセリフもすごく少なくて、ほんとに静かすぎる作品です。

このイ・ユンギ監督の作品、たまたまなんですが、大好きな「素晴らしい1日」の他にも「チャーミング・ガール」「男と女」を見てて、どの作品も劇的ではないのですが、人物の揺れ動く心情をセリフよりも表情や行動をゆったりとした間を持って映し出してました。
この監督さんの作風、わたし結構好きです。

結婚5年目の夫婦。
妻が「家を出る」と別れを切り出した日と、荷造りをして出て行く日を淡々と映しただけで、起きることといえば、子猫が迷い込んできた事と、その猫の飼い主のお隣さん夫婦が来たことくらいです。

家を出て行くために荷造りをする妻。
だけどさほど捗らず、窓辺から大雨の降る外を眺めてたり、椅子に座ってぼんやりとタバコをふかしていたり、それだけのシーンが何分もワンカットで映されます。
そして、そのシーン自体は何もないまま過ぎていきます。

だけど、荷造りの捗らなさやぼんやり佇んだりしてる妻の姿からは、これでいいのかという迷いや、夫への気持ちが奥には残っている、そんな心の揺れが伝わってきます。

夫の方は、思いがけず妻から別れを切り出された時も、取り乱したり怒ったり責めたりすることもなく、動揺はあっても感情を妻にぶつける事がない人なんですね。

すごく優しくて家事もするし妻への思いやりもある。
料理もするし美味しいコーヒー淹れてくれて、散らかさないし、イケメンで腹筋も割れてるし、仕事も成功してるんですよ!
ヒョンビンなんですよ!

でも完璧過ぎるんです。
妻の気持ちや決意を尊重してくれてるんですけど、なんでも「わかったよ」「大丈夫」って納得されたら、「え、わたしは何なの?」ってなってくるんですよね。

夫婦だから、ちゃんと気持ちでぶつかって相手の思いを感じたいんだけど、そういうの出さない人なんですよ。

心がないのかと思えばそうでもなくて、別れの日も、淡々としているようでどこか落ち着かず、妻のふとした行動に、思わず妻への愛が溢れてしまいそうになったり、そんな繊細な内面の揺れ動きが切なかったり、或いはこれいきなりブチギレて恐ろしい展開になるのかしらとどこかスリリングだったりするのです。

互いに嫌いになったわけでもないし、一緒に料理したりする感じを見てても、よりを戻そうと思ったらできそうな感じもするのですが、妻が求めてることと決定的にズレてて、そのひとつひとつは小さな些細な事なんですけど、その溝って結構大きかったりする、そういうところを静かだけどしっかりと突いてきて見せてくれるから、この監督さん信用できるなって思います。

冒頭の空港に向かう車中は何分くらいあったのかわかりませんけど、かなり長いドライブでの夫婦の会話をワンカットで撮ってて、まずそのことにおおっ!てなりました。
その長いワンカットの中で、夫婦の心のズレが絶妙に描かれています。

わたくし、だだ今「ハ・ジョンウ サランヘヨ祭」を絶賛開催中なんですね。
だからジョンウさん目当てで見たら、いつになっても全然出てこないし、ほとんどのシーンが1人か夫婦2人だけ。
そしたらかなり後の方でジョンウさん電話かけてきまして、声だけの出演でした。
でも、声がめちゃくちゃ良いじゃないですか。
だから存在感がちゃんとあるし、ジョンウさんの声とわかって、それはそれで良かったんですよ。

ていうか、ヒョンビンかっこいいから!
「コンフィデンシャル 共助」ではキレッキレのアクションも繰り出す北朝鮮の寡黙で超クールな刑事を演じとても魅力的でしたが、今回はそれとは全く違った物静かな人で、アクションといえば、子猫を抱っこする萌えシーンは必見ですが、階段を上り下りするか、開きにくい扉を開けるか、コーヒー淹れたりパスタ作ったりするくらいなんですね。

それでも、その静かな人が最後に見せる感情に心を掴まれるし、その繊細さにグッときます。

わたしならヒョンビン置いて家は出ないよ!
いや待てよ、でも相手がジョンウさんやったら…
ヒョンビン、ごめん!ミアネヨ。
というイケナイ妄想を膨らませてしまいました。

イ・ユンギ監督もヒョンビンもジョンウさんも好きです。

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