ドキュメンタリーなのにミステリーがあり、「この先どうなるの?!」とハラハラさせられます!
1970年代初頭の南アフリカで、絶大な人気を博したロドリゲスというアーティスト/ミュージシャンがいた。彼のアルバムは通算50万枚も売れ、「一家に一枚」ロドリゲスのアルバムはあったし、どのパーティに行っても、ロドリゲスの曲がかからないことはなかった。
彼の音楽がなぜそんなに南アフリカの若者に刺さったかと言うと、当時の南アは、1950年代から続く人種隔離政策(アパルトヘイト)が頂点に達し、反対運動と政府の弾圧、センサーシップなどで混乱した状態だった。しかもこの政策は世界各国から非難され、オリンピックから除外されるなど、全世界から孤立していた。
こんな時期に青春時代を過ごした若者たちにとても同情するのですが、彼らはロドリゲスの歌詞を聞いて初めて
「あ、政府に怒っていいんだ!現在の状況をただ受け入れなくていいんだ!」と気が付いたんだそうです。
その後、ロドリゲスの影響を受けたバンドがたくさん登場し、若者たちが初めて声を持った瞬間だったそうです。
こういう熱い想いにちょっと涙ぐんでしまいました。本来、若者のカルチャーってのはこうあるべきなのに、現在は本当に「ヤラセ」の消費カルチャーばかり。
しかし、ロドリゲスはアメリカのミュージシャンであること以外、全く情報が入ってこない。情報規制も理由なんだろうが、それでも他の欧米のミュージシャンたちの情報は入ってくる。
ファンたちは、歌詞を分析したり、所属レーベルを追跡したりするのですが、1990年代に入るまで謎のまま。
ロドリゲスを知る人達を追って、カメラは南アのケープタウン、アメリカのデトロイト、LAなどなど、様々なところに行くのですが、映像も素晴らしいんです。私は通常、ドキュメンタリーって退屈しちゃうのですが、このシネマトグラフィーの素晴らしさ、ドキドキさせるミステリー、そして本物のアーティストとはどういうものなのか?というメッセージがあり、泣かされます。
ネタバレはコメント欄で!