MasaichiYaguchi

ボクたちの交換日記のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ボクたちの交換日記(2013年製作の映画)
3.1
どの様な業界でもそうだと思うが、その世界で生き抜き、一角の人物になるのは大変だ。
特に才能ある者しか生き残れない「芸の世界」は弱肉強食だと思う。
一世を風靡しても、「一発屋」で終わり、何時の間にか忘れ去られる人も数多いる。
現在、テレビや映画、舞台で何十年も活躍し続けている人は、運だけで生き残っている訳ではなく、その人の持つずば抜けた才能と、その才能の輝きをかげらさない努力もしている筈だ。
この作品は、放送作家・鈴木おさむさんの「芸人交換日記~イエローハーツの物語~」を、ウッチャンナンチャンの内村光良さんが脚本・監督した映画。
鈴木おさむさんも内村光良さんも、よく「お笑いの世界」を知っている方々なので、本作で描かれる主人公のお笑いコンビ、「房総スイマーズ」の苦難の日々がリアルに描かれている。
売れない芸人は、「本業」だけでは生活が出来ないので、下積み生活の長い彼らもアルバイトで生計を立てたり、彼女に食べさせてもらったり、それでも足りなければ借金で食い繋いでいる。
私は、この作品で描かれた内容よりも、もっと悲惨な貧乏暮らしをしている芸人の実態を知っているので、彼らの生活は「まとも」な方だと思う。
本作の前半では、彼らのコミカルな「生態」を描いていて楽しいが、お笑いコンテスト挑戦を描く後半からシリアスモードに変わり、既視感のある展開になっていって残念だ。
原作未読なので、映画と原作の差異は分からないが、如何にも「お涙ちょうだい」的な終盤の展開は違和感があって、感動を呼び起こさない。
何組ものお笑いコンビが登場したり、伊藤淳史と小出恵介という異色コンビによる、息の合った漫才の掛け合いも良かっただけに、「青春時代からの友情」と「お笑いの世界の厳しさ」を対比させて、「青春の挫折と栄光の痛み」を描こうとしたことは分かるが、何とも残念な「あざとさ」が残ってしまったように思う。