茶一郎

パラノーマン ブライス・ホローの謎の茶一郎のレビュー・感想・評価

4.2
今作『パラノーマン ブライス・ホローの謎』は、まさかのストップモーション・アニメによるゾンビ映画。本来、実在感を際立てるためのストップモーションですが、冒頭から「幽霊」という実在感を表現していけないモノもストップモーション・アニメで表現する力に一発KOです。

 現行3DCGアニメが席巻しているアニメ界に、ストップモーション・アニメで殴り込みをかけるアニメ制作会社ライカ・エンターティメントによる長編アニメ第二作目。
 田舎町ブライス・ホローに住むノーマン少年は、死んだ人間が見え、話ができるという才能を持つホラー・ゾンビ映画マニア。「フリーク(変人)」扱いをされ周囲に溶け込めずにいるノーマンですが、ある日、叔父から「魔女の魂が町を滅ぼそうとしている!」というお告げを受け、町を守るために動き出します。

 ライカの前作『コララインとボタンの魔女』と同様、日常から一気に物語内非日常=ファンタジーの世界に移行する瞬間が「本当に、これストップモーション・アニメかよ!?」と目を疑うほどに素晴らしい。しかも今作は、その移行が複数回に渡るのですから、作り手たちの気合いの入りようが伺えます。

 全編、ゾンビ映画オマージュ、ゾンビ愛に満ちた作品で、一見、普通のゾンビ映画のように見えますが、「ゾンビは敵」というありがちなゾンビ映画を逆転するような展開を見せるのが今作『パラノーマン』の魅力。
 ゾンビ映画的題材に少年の勇気の物語、集団の怖さを映します。さらに魔女裁判のマイノリティ(フリーク)狩りという側面に焦点を当て、集団(マジョリティ)とフリーク(マイノリティ)との関係を物語内にあぶり出す。
 周囲に馴染めないフリーク(変人)であると同時にマイノリティでもある主人公が、自身の鏡映りの存在である悪役を目の前にして、「フリーク=変わっているのは自分らしいこと」であるということにたどり着く物語。素晴らしく感動的に終着する『パラノーマン』、何より子供向けのアニメだろうと容赦なく「人間怖い」、「集団怖い」と思える瞬間が映っているのは、ロメロの感染映画として最も素晴らしい点に思いました。
茶一郎

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