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パラノーマン ブライス・ホローの謎のdeenityのレビュー・感想・評価

4.5
ストップモーションという撮影法で撮られたアニメーション作品。馴染みの深いところで言うならば、『ひつじのショーン』とかあの辺のイメージがしやすいのでは。手が込んだ技術なので大変だとは思うけど、それでもあの独特な動きとかクオリティっていうのはストップモーションならではなので個人的には期待値は高め。

しかしその期待値を悠々と超えてくれる作品だった。アニメだけどジャンルはホラーなのか。ゾンビが出てきて襲ってくるのは当然大人の自分からすれば怖くはないのだが、それこそ独特な動作をするこのゾンビ達がコミカルで愛くるしさもあったりするのだ。だからパニックシーンも実に面白い。笑えるし、ハラハラするし、大人でも十分楽しめるのだ。

ただこの作品は大人が見ても楽しめるのだが、是非とも子どもに見てほしい映画だ。
そもそもゾンビがなぜ現れたかといえば主人公のノーマンが関わってくる。ノーマンは人が見えないものを見ることができる。死んだ人だ。家には大好きな祖母の霊がいて、街を歩けばいろんな霊たちが話しかけてくる。だから周りからは変人扱いされている。親からもだ。そんなノーマンが突然任された任務にゾンビが関わってくるわけだ。

意外とサクサク話は進んでいくから淡々と見ていくこともできるのだが、この作品で描かれているのはノーマンに対するいじめだ。
気にかけてくれる子もいる。だけど二人でいて傷つくことがあるかもしれないから、だったら一人の方がいい、っていうノーマンの気持ちはすごくわかる。
本当は心から拒絶しているわけではなくても怖いのだ。テーマにしているのは案外ディープでヘビーなものだ。

このノーマンの変化は当然の見どころだ。だけどもっともっとこの作品には子どもたちに見てもらいたい所がいっぱいある。
ゾンビが悪い奴らだと決めつける先入観。そして悪は、理解できない不気味な人は人間だろうと容赦なく排除していこうとする大人たち。魔女のアギーの事実。怖くても共感してあげようとする優しさ。人は一人ではないこと。怒りに任せて復讐するのではなく、赦しを与えてあげること。
テーマにできることがむしろ多すぎてどれも大切なテーマだ。

そりゃ子どもだから全部が全部深いなって思ってくれなくてもいい。ただこういう作品を見て、感覚的に大切なことが何かって養って欲しいし是非好きになって何度も見て欲しい。「人には見えないものが見える」という個性。それは見えない人からは理解しにくいかもしれないけれど、だからと言って排除していい理由にはならないのだ。
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