けーはち

パラノーマン ブライス・ホローの謎のけーはちのレビュー・感想・評価

3.4
“死者と話せる”少年ノーマンが、ゾンビが溢れかえる怪事件を解決!──ストップモーション・アニメの雄スタジオLaikaのコメディ・ホラー映画。

冒頭『バタリアン』風、脳ぐちゃぐちゃゾンビ映画を鑑賞する主人公は、家でも学校でも白眼視される孤独な少年。『シックス・センス』のごとく親しく喋る人は全て幽霊。ただ一人同じ霊能を持つ大叔父(人里離れた隠遁を極め、ホームレスのよう)から“魔女の呪い”を鎮める奇妙な使命を授かり、それが失敗し町にゾンビが溢れるパニックが起きる。この辺までは、超能力・学校モノ・オカルトホラーのあるある的パロディックな展開の寄せ集めに見える。

ところが中盤、実はゾンビは人間に危害を加えないと分かる。昔、無実のまま処刑された霊能少女が“魔女”であり、当時の魔女裁判関係者たちに対し、ゾンビとして甦り生者に退治されるという呪いを植えつけた。たとえ無害であろうとも、社会のアウトサイダーとなってしまった霊能者=魔女(=バケモノ)と同様ゾンビ(=バケモノ)たちの声は、群衆に届かない。絶望の中で叩きのめされることになる。それを知った主人公ノーマンは、復讐による暴力の連鎖を止めるため、本気で“魔女”を鎮めることを決意する。

『コラライン~』からのオカルトホラー路線の延長線上とはいえ、“魔女裁判”という人類の黒歴史めいた要素含みの重い題材をファミリー向けアニメとしてキレイに着地させようとするあまり復讐を止める説得のくだりがちょっと説教くさい仕上がりになってしまった。Laikaの超絶技巧のストップモーションアニメが冴えることには変わりないのだが、物語の心情的には後年の和風ファンタジーアクションもの『KUBO』路線がよほど正解だと思う。