空海花

偽りなき者の空海花のレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.4
せっかくなのでもう1本デンマークから🇩🇰
今回初鑑賞。


トマス・ヴィンターベア監督
脚本はトマス・ヴィンターベア、トビアス・リンホルム。
カンヌ国際映画祭男優賞受賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

紅葉、鹿、猟銃。
穏やかに見えるデンマークの小村には
狩猟の文化が根付いている。
原題“Jagten”は「狩り」の意。

離婚と失業を乗り越え、幼稚園の教師についたルーカス(マッツ・ミケルセン)は、そこでようやく穏やかな生活を手に入れようとしていた。
離婚と失業と聞くだけで心が折れそうだが、サラッと電話のシーンで理解できるのがクールだ。
しかし次の試練はあまりにも理不尽で耐え難い。

幼い子供の小さな嘘
のどかで優しげな小さな村の閉鎖性
その小ささがとんでもない破壊力を持ってルーカスに襲いかかる。
親友さえも彼を疑うが、
この場合それを責める気にもなりづらい。

「子供は決して嘘をつかない」
ある意味で正しいが、
むしろ子供はよく嘘をつく。
だいたいはしょうもない、バレバレの嘘なのだけれど。
幼稚園の職員に言わせるのが妙技。

彼の職業が教師(幼稚園の前は小学校の教師)というのも効いていて
誇りを失わないための人としての行動は
そこにあるのだろう。
それが更に悲哀感と孤立を高めていく。

観るタイミングを間違えたらしく
ボロボロ泣きながら観てしまった。
少ない味方がいるにはいるが
それでまともに暮らすにはこの村が小さすぎる。
容赦なく悲痛、怒りも込み上げてくる。

ラストのパートに入る前の
鏡の前のマッツを映すシーンは鳥肌が立った。
後味の悪い終幕も強く心を揺さぶってくる。
信頼とは何か、集団心理、その土壌など
深く掘り下げた傑作。


鑑賞No.の下からネタバレ含みます。

2021レビュー#083
2021鑑賞No.135


真相は観客しか知らないというのがとにかくもどかしい。
クララは小さくて、自分のせいとは感じてもそこまで理解できないし
大きくなったら忘れているか、
覚えていてもかなりおぼろげだろう。
大人たちには、マッツや両親さえも
嘘をついたのはわかったとして、
何でそんなことが言えたのか具体的に説明されることはない。
お兄ちゃんが妹を見て涙ぐむけれど
おまえがあんなの見せるからだぞ😑とか
幼い子の恋心をお断りするには
マッツさすがにあれでは固すぎるよ😦とか
観客にはいくらでも出て来るけれど。
そこに非があると言いたい訳ではなくて
作品内のそういう積み重ねも非常に細やか。
見ているだけなのに、マッツが抱き上げる愛犬ファニーの重さをすごく感じた😢

ラストはクリスマスから1年後に時間が跳ぶが
きちんと理解を得て、こうなっているとは考えづらい。
親友テオと和解したことと
元居る味方から何となく広がっていって
少数派でなくなっていっただけのように思える。
これらも別の意味で子供のトラウマになりそう。
集団心理に罪の意識はあるのか。
犯罪者はどっちだよ。
こういう場合、後ろめたさはそれを知っている相手に、だからこそ居なくなってほしいという感情も働くともいう(魔女狩りとか)
そして互いに説明されないなら
せいぜいタブー視されるだけ。
こうやって何となくこういうものだと
連綿と続いてしまうものなのかもしれない…(あぁおそろしや)
空海花

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