えいす

偽りなき者のえいすのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.5
 無実の罪を着せられた男が、自らの潔白を証明「できない」お話。できないんです!真相はもう闇の中に消え去っています。

 そして観客はその絶望を全身で感じ取ることができます。綿密に組み立てられたストーリー構成で、最初から「主人公は疑いを晴らして、最後にはハッピーエンドになるんだろうな」という可能性を一切感じさせないようになっています。
 それはこの映画の重要なポイントです。「この男は無実を綺麗さっぱり証明できるのか・できないのか」という点に目が行くと、観客はこの映画の本当のテーマを見逃してしまうからです。

 最初から薄暗い絶望感たっぷりなのに、映画が進むにつれてさらに闇と絶望は濃くなっていきます。「誰にでも起こりうる人生の落とし穴」として、観客は「なんか絶望してる男がいるな~かわいそう~」ではなく、自分自身が絶望しているように感じられるでしょう。

 この映画を身近な物として感じさせるのに、見事な撮影技術も助けになっています。
 人間の目で見える景色をそのまま切り取ったような、ドキュメンタリー的なリアリズムに満ちていて、クレーン撮影やローアングル、見たいものを意図的に隠したり、わざとらしい光の当て方や影の落とし方を一切用いません。
 私はこういう撮り方をしている映画が大好きなので、一発でハマってしまいました。オススメ!!!

😍いいところ(加点ポイント)
・脚本
・徹底的にリアリズムにこだわったカメラワークと編集
🤮わるいところ(減点ポイント)
・なし
🤔映画を見る前に予習しておいた方がいいこと
Wikipediaで「マクマーティン保育園裁判」(80年代アメリカで起こった、児童虐待をめぐる集団ヒステリー事件)の記事を読んでおくと、この映画のテーマを理解する助けになると思います。
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