凛太朗

偽りなき者の凛太朗のレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.3
胸糞必須のデンマーク産不条理劇。監督はラース・フォン・トリアーとドグマ95を始めたことで知られる『セレブレーション』のトマス・ヴィンターベア。
と言っても私は『セルブレーション』を観たことがないし、この作品もドグマ95のルールに則ってはいない。
しかし、ラース・フォン・トリアーばりの胸糞というか、また違った胸糞展開であると共に考えさせられもするし、それがいい。

デンマークのある小さな村で、42歳で幼稚園の教師をやっているルーカス(マッツ・ミケルセン)の親友テオの愛娘であるクララがついた一つの嘘によって、ルーカスはクララに対する性的虐待の嫌疑をかけられてしまい、村八分を食らってしまうという集団心理の恐ろしさと不条理を深く抉りつつ、家族、自然、社会の一つの本質を突いたような作品。

個人的にマッツ・ミケルセンは好きな俳優さんであると共に、ドラマ版ハンニバルの異常性の強いキャラの印象が強いのだが、本作ではその真逆のキャラである。
そしてイケメンである。
そりゃおませなクララがメロメロになっても仕方ない。というか、子供には子供の気持ちがあるのである。子供の言うことだからと侮ってはいけない。

そして恐ろしいことに、この映画クララちゃんも可愛いのである。
おませちゃんとは言え、ついてしまった嘘自体もイノセントに他ならないと思うし、実に曇りなき眼である。
しかし、本作においてというか、そもそもデンマークだけではなくここ日本においての現代の社会性からして、その辺にいる可愛い子供を可愛いと言ってしまう素直さもまた危険なのかもしれないという恐ろしがある。
そして私は、社会性という名の集団心理、同調圧力のもとに過剰に反応してしまう大人たちにこそ異常性を感じると共に、子を持つ親として、子供のことを心配しすぎてしまう気持ちもまたわかる。
そして子供が親を思う気持ちも、やはり痛いくらいにわかる。
ルーカスの息子マルクスが非常に良かった。

本作、自然及びアースカラーによるカラーコーディネートが非常に目立つなぁと思いました。
目に優しいなぁとか思う反面、やはりそこにあるのは自然、或いは自然と共に育まれた片田舎のコミュニティにおける脅威だとも思いますね。
狩る側をまた、狩られる側というかね。
大人が子供に、子供が大人になることもあるというか、弱肉強食の世界ではなく、些細なことで弱者にも強者にもなれてしまうという不条理ですね。
凛太朗

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