Tomo

偽りなき者のTomoのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.0
ひさびさに見ていて気分が悪くなった映画だった。

映画の出来が悪いからではない。むしろかなりの傑作だと思う。
人間の恐ろしさ、残酷さをこれでもかと思い知らされる。

人は、思い込みで物事を判断する生きものである。
もし自分の子どもが何らかの危機にさらされたとなれば、全力で我が子を守るのが親の責務であり、それは世間一般では美しいものとされている。
僕自身、いじめっ子の父親・母親と対峙した時には、彼らのあまりの盲目ぶりに辟易した覚えがある。

時として、親の愛情は、真実を曇らせる。
仮に子どもが嘘をついていたとしても、親は「ウチの子が嘘をつくはずが無い」と自分を誤魔化そうとする。

その愛情が最悪の事態を招いてしまうのが「偽りなき者」における事件である。

神の視点でルーカスを見ている我々は、彼の潔白を心から信じることができる。だからこそ彼が迫害されれば「やめろ!彼は無実だ!」と胸糞悪い気分になり、心底人間の愚かさを嘆く。

だが、もし我々が当事者となった時、果たして冷静な目で彼を見られるのか?

そして、もしルーカスの立場に立たされたとき、我々はどう行動すべきなのか?

さまざまな自問自答を繰り返させられる、そんな問題提起をはらんだ力作だった。

マッツ・ミケルセンの名演も含め、必見の名作だ。
Tomo

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