無邪気な子供の嘘ほど残酷なものはない事を強く感じる作品だった。
幼女の心に僅かに芽生えた恋心が一人の男の人生をここまで大きく変えてしまうなんて…
反論の隙も与えずまさに坂道を転げるが如く犯罪者のレッテルを貼られてゆく様がただただ恐ろしくて痛々しくて辛い。
あんなに仲がよかった友人、愛する恋人迄もの心が一気に猜疑心に変わる恐ろしさ。
この類の罪はもはや殺人を犯すこと以上の罰を背負わされる気さえする。
例え無実が証明されたとしても決して100パーセントの上書きが出来るほど単純ではないのだ。
さしずめルーカスの人生は勿論のこと、一生消えることの無い十字架を背負ってしまった幼女クララの人生を考えてもやり切れない辛さだけが残る。
そして一歩間違えば冤罪が新たな狂気を生みかねない程の惨たる状況でも、ギリギリのラインで踏み止まり精神を保てたルーカスは紛れもなく素晴らしい人格者。
そしてそうさせたのは信じてくれた息子が居てくれたからに他ならない。
美しすぎる北欧の風景と決して消えることの無い冤罪のレッテルという狂気のコントラストは大きく、ラストで響き渡る銃声にはどこにも救いは見い出せなかった。