胸糞鬱不条理大好き

偽りなき者の胸糞鬱不条理大好きのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
5.0
解決の糸口が見つけられず雁字搦めになり、無力感に苛まれる。それぞれが正義を求めた結果、大きな間違いに繋がったから。

きっかけは、幼い少女の些細な嘘。
大した悪意などない、自尊心を守るための作り話。

その嘘が、ルーカスに無実の罪を着せる事になる。

「そんな嘘をつく理由が無い」
子どもの抱く感情への侮りが真実を捻じ曲げ、大人の庇護は嘘の修整を認めない。

情けなく恐ろしいのは、当事者ではない群衆の行動。集団ヒステリーのように、まだ何も分かっていない段階でルーカスを犯罪者と決めつけ迫害する。

結果、ルーカスは一度逮捕された後に釈放されるのだが、かといって、それで彼の尊厳を守る戦いが終わるわけでは無かった。


「偽りなき者」
ルーカスを指すならば、真っ当に尊厳を守ろうと立ち向かっていた彼を称える言葉だと思う。
嘘をつくはずがないと信じられたクララを指すならば、随分な皮肉だ。


冷静に、バイアスをかけずに、感情に呑まれずに物事を理解しようとする。
たったこれだけの事が、私達には非常に難しい。