こたつむり

地獄でなぜ悪いのこたつむりのレビュー・感想・評価

地獄でなぜ悪い(2013年製作の映画)
3.9
★ 自由に!
  自由に生きようとしただけなのに!

映画愛+暴力表現+コメディと来れば答えは一択。「これはタランティーノだ」と鼻息が荒く。予想よりも笑いのツボがピタリとハマり、序盤はゲハゲハと楽しんでいましたが…。

鑑賞後に抱いた印象は“永井豪先生の作風”。
「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つける」と言わんばかりにグイグイとやりたい放題。“映画愛”はあくまでもモチーフであり、本音は違うところにあるのでしょう。

特に“映画への熱”を語るところが薄ら寒く。
これを“園子温監督が斜に構えているだけ”と受け止められないのは僕が汚れているからでしょうか。個人的な嗜好で言えば、もっと愚直な方が好きなのです。

確かに「映画が好き」と言っても。
個々の作品が好きなのか、映画と言う表現方法が好きなのか、その比重は人それぞれですからね。本作が人を激しく選ぶのも当然だと思います。

ただ、どちらにしろ、俳優さんの持ち味を引き出す…その一点においては監督さんの技量は疑うことがなく。堤真一さんの軽妙さをググッと前面に出したのは見事でありました。

また、二階堂ふみさんの魅力を十二分に理解しているのも流石。露出度の高さは言うまでもなく、唯一無二とも言える存在感を活かした展開は鼻息が荒くなりました。

それに彼女の幼少を演じた原菜乃華さんも忘れてはいけませんね。正統派美人に育つ素養が見え隠れするから、堤真一さんがロリコ…児童が好きな役柄であることに不自然さがないのです。

あと、地味にツボだったのが音楽。
叙情的な部分で流れる旋律が良いのです。
重要なキーワードとなる「♪全力歯ぎしりレッツゴー」についても耳に残りますからね。音楽全般についてもクオリティが高いと言えると思います。

それだけにクライマックスの場面で次第に肩が下がったのは残念の極み。勿論、あの“修羅場”こそが監督さんの描きたかったことだと思いますので…やはり、僕とは相性が悪いのかもしれません。

まあ、そんなわけで。
血糊の多さに人を選ぶのは確実の作品(PG-12です)。でも、ピタリとハマれば痛快な物語だと思いますので、本作を試すときは心身ともに余裕があるときをオススメします。
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