私にとって巨匠スピルバーグ監督のイメージを覆した作品だった。どちらかと言うとエンタメ系作品が多く、正直、ネームバリューから返って敬遠しがちになったりしていたので（大勢が好むエンタメ系が苦手）がしかし、この作品はアクションはなく、会話劇に終始一貫している。
内容は勿論のこと、この作品は特典映像（1時間以上たっぷり）が大変に見応えがありました。これを観られただけでも為になったし、スタッフ・キャスト全員がリンカーンへ敬意を持ち、真摯な気持ちが一丸となっていた事（監督はスーツ、全員無駄口、私語一切なく一体感）を知り、それだけで胸が熱くなりました。その思いがとても深みを増し重厚感となり、リンカーンの気持ちに寄り添っていたのをつくづく感じ取れました。
小学校で誰でもが習う🇺🇸史上、最も有名な元大統領エイブラハム・リンカーン。
多くの名言を残している。ただ生い立ち〜の詳細はあまり知られていないかも知れないが、その一生を追うのではなく、リンカーンが暗殺されるまでの最後の4ヶ月に絞り描いている。
その短い期間だけなのに、3度目のアカデミー賞最優秀主演男優賞を勝ち取っただけある、ダニエル・デイ＝ルイスが、まるで生き写しで憑依したとしか思えない熱演ぶりで、観た者の心に響く一人の完璧なる偉人を彫み付けてくれた。ダニエルは準備期間1年程の間に読める本を読み漁り、徹底してリンカーンになり、撮影中はスタッフもリンカーンとして扱っていた。監督さえ、撮影終了したものの、もうリンカーンに会えない寂しがあったと言う。
監督は、リンカーンが余りにも多くの事を成しているが、今作のテーマを『奴隷制度廃止』と『南北戦争終結』にのみ絞ったと言う。
しかし、そこに家族との関係も見せ場として作っていて、政治だけの堅物人間でなく、一人の男として、夫、父の苦悩も描いていて見応えがあった。（息子ロバートをジョセフ・ゴードン＝レヴィットに推したのはダニエルだった。ジョセフは憧れのスターと仕事が出来た事を夢見心地のように語っている）
史上最も愛された大統領と言われるだけあり、とても親しみ易く、いつでもユーモアを絶やさず黒人を含めたすべての人々にオープンに接する気さくな人物だった（閣僚打合せ最中に鉛筆をナイフで削っている。この案もダニエルが出しているそう）
リンカーンご本人は声が少し高めで良く通ったと言う。なので、遠くにいる1人でも多くの人の耳に到達したのだろう。そこをダニエルは意識していたでしょう。滑舌良くわかりやすく演説している。
奥さんは4人産んだ息子の2人を小さな子供の頃に亡くし（この作品に出ている4男ものち18歳で死去）その辛さや政治家の妻としてのストレスもあって、精神が不安定だった。割と政治に口を挟む事もあり、リンカーンは家庭でも不安を抱えて過ごしている。しかし、深い愛情を持って、出来る限り優しく神経過敏な妻を愛情で包んであげていた。
この作品は私としては珍しく、観た後直ぐにレビューが書けないほど、あまりにも偉大な素晴らしい人間で、敬意を持って胸に温めていました。
世間の評価が低いのはなぜでしょうか？？
皆さん、良い作品はしっかりと読み取りましょう！！
