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リンカーンのKenzOasisのレビュー・感想・評価

リンカーン(2012年製作の映画)
4.0
「同じものに等しいものは、互いに等しい」

奴隷解放宣言を唱え、奴隷制度の撤廃に尽力した大統領、エイブラハム・リンカーン。国を二分する戦争の終結と、奴隷制の撤廃。その双方を達成するためのリンカーンの苦節と葛藤、そして政治的な攻防線を描いた作品。

名言の宝庫すぎる…とんでもない映画だった。スピルバーグ監督って、やっぱりものすごいですわ。

言うまでもなく、ダニエル・デイ=ルイスの名演が光ることでリンカーンの深い造詣と心が見えてきた。英雄としてとか、何かの象徴としてのリンカーンではなく、ひとりの、とてつもなく素晴らしい人間としてのリンカーンがそこにいました。

話ひとつどれをとっても興味深く、ユーモアたっぷりなところが本当に魅力的。こんな人になりたい。
「すべての血と涙はこのときのために流された」と激昂するシーンが唯一の彼の怒り。あとはひたすら、苦悩の中を楽しんでいた。こんな人が実在したのか……とさえ思えてくる。「インディアンだけは徹底して攻撃した」というのはどうしてだろう。人間とは複雑なものです。

政治的な攻防戦のシーンが多いし、アメリカの立法制度の中の話なので少し難しいところがありますが、それこそがリンカーンたちを苦しめたものであり、リンカーンを稀代の大統領にしたと言えるので見応えは抜群。

トミー・リー・ジョーンズ、ジョセフ・ゴードン=レヴィットも素晴らしい活躍を見せてます。アダム・ドライバーも地味に登場。

これだけの仕事を成し遂げた人物が最後は暗殺され、妻は精神を病み、四男は病死だなんて、なんて悲しい運命なのかと切ないですが、良い映画です。
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