ぴよまろ

清須会議のぴよまろのレビュー・感想・評価

清須会議(2013年製作の映画)
4.6
三谷幸喜脚本・監督作品。
本能寺の変後、織田家の家督を継ぐのは誰かを、柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興らの宿老たちが話し合いという名の戦で決める、史実をもとにした群像劇。

チャンバラの無い歴史もので、そのほとんどが会話劇であるにもかかわらず、しっかり最後まで楽しめました。自他ともに認める歴史マニアな三谷幸喜氏が、歴史部分をかなりこだわって作られているのが分かります。背景にある歴史を大事にしながら、喜劇として描くのはさすがです。

政治は苦手だが人情家の柴田勝家(役所広司)と抜群のカリスマの羽柴秀吉(大泉洋)をはじめ、丹羽長秀(小日向文世)や池田恒興(佐藤浩一)など、各キャラクターがとても魅力的。特に勝家の愛すべき暑苦しいオッサン感と、秀吉の最強の人たらし感は、名演です。

時代を味方につけた羽柴秀吉の強さと時代に取り残されてしまった柴田勝家の哀愁との対比が、この時代観を表していて良かったです。特に終盤の、この2人の会話が切ない。政略はできない武辺者で、人情家である勝家が、時代についていけなくなったことをあらためて実感し、そんな柴田にある程度の敬意を払いつつも、織田家のため、自身の出世のために切り捨てざるを得ない秀吉のキャラクターのあらわれが素晴らしい。史実的にこの2人が後に合戦で戦うことを予期させるのも良かったです。

一方で、いつもの三谷作品のように誰でも楽しめる、というタイプではないかとも思います。主人公を柴田勝家と羽柴秀吉のどちらで観るか、また、史実の清須会議の経緯と背景をどこまで知っているかどうかで、感想が変わる作品ですね。細かいことは苦手だが熱い男である勝家が魅力的すぎて応援したくなるのですが、秀吉が勝つのは動かせないという、脚本と史実の間のジレンマがあるのかと思います。

この後の大河ドラマ「真田丸」が大傑作だったのも含め、三谷作品の歴史ものは、氏が楽しんで作っているのが垣間見れて最高です。
ぴよまろ

ぴよまろ