♪ 生まれかけの気持ち 石鹸玉
いつの間にか フワリ
あなたの肩にとまりたい
「映画にリアリティが必要か」
と問われたら首を横に振ります。
映画に限らず、創作物においてリアリティは“武器”のひとつ。まるで夢のような物語でも、面白ければリアリティは必要ないのです。
しかし、それが作品の良い部分を打ち消していたら。やはり「リアリティが足りない」と言わざるを得ません。
そして、本作はそれが顕著でした。
僕らが生きる日本とは違う歴史であること。
それ自体に問題はありません。あくまでも設定のひとつです。法治国家の中で合法的な戦争が行われることも不思議ではありません。歴史の積み重ねが人の意識を変えるのですから。
寧ろ、積極的に変わっていないとダメでしょう。メディアが検閲され、その影響下で育ったのならば…僕らが生きる日本とは別の価値観のはず。というか、思想の自由を勝ち取る物語ならば、そこが最も重要。
でも、本作の本意がSFを描くことではなく。
新人と教官の恋愛模様が主題だとしたら。
リアリティが足りないのも当然の話。
つまり、現代版『スチュワーデス物語』なのですね。21世紀仕様なので「私はドジでのろまな亀で…」なんて言わず、とても強気な主人公でしたけど。
ただ、小説だったら気にならなかった表現も、映像化するならば、もう少し落ち着いた雰囲気にしたほうが良かったと思います。正直なところ、いつ舌をペロリと出すのか…冷や冷やものでした。
まあ、そんなわけで。
佐藤信介監督の特色(脚本に忠実であること。役者さんの個を尊重すること)が悪い方向に作用した物語。というか、僕は対象年齢から外れていたのでしょうね。中高生がターゲットの作品だと思いました。
ちなみに我が家の小学生は「最初は良かったんだけどねえ」なんて不遜なことを申しておりました。基本的にラブコメに過剰反応するお年頃なので、心の底では舌なめずりしていたかもしれませんが。