こたつむり

建築学概論のこたつむりのレビュー・感想・評価

建築学概論(2012年製作の映画)
3.8
♪ 今 君がこの雪に気付いてないなら
  誰より早く教えたい 心から思った

おせちもいいけどカレーもね。
…じゃなくてサスペンスもいいけど恋愛もね。
ということで今回観たのは『建築学概論』。
とても小難しそうなタイトルですが、直球ど真ん中の恋愛映画でした。

確かに、家とは自身の居場所。
誰かのために家を建てる…それは恋愛の隠喩であり、ドラマを盛り上げるのは当然ですが…ここまで堂々と直球を投げてくるのは見事な限り。韓国らしい割り切り方です。

ちなみに家って人が住まないと痛みが早いんですよね。つまり、喩えるならば“究極の構ってちゃん”なわけで、人間と一緒に生きる存在。そう考えると、空き家の場面を挿入したのは…いやぁ。尊いですなあ。

しかも、本作が見事なのは異なる味わいの並立。時には背中が痒くなるような青春の疼きで“甘酸っぱく”なり、時には芳純な珈琲の香りが沁みる“ほろ苦さ”も味わえる構成なのです。これは脚本が秀逸な証左。

朴訥としたスンミンの想いの着地点。
そして、自由奔放なソヨンが彼の前に現れた理由。少しずつ糸を解きほぐすようにして描かれるので、気付けばググっと前のめり。物語の進捗に合わせて二人の印象がコロコロと変わっていくから飽きません。

あと、スンミンの友人も良い味を出していました。登場場面は少ないんですけどね。頼りになる親友、という風貌が印象に残ります。

まあ、そんなわけで。
一組の男女に焦点を絞ったシンプルな構成ながらも、グイグイと惹きつける見事な物語。「俺はあいつであいつは奴で」的な三角関係を取り入れなくても、ドラマチックに仕上げるのは可能なんですね。

最後に余談として。
本作の中で、眠っている相手に“チュウ”をする場面がありますが、あれって大概は気付きますよね。あ、いや、僕も経験があるとか、そういうことではないのですが…うん。犯罪だからダメですよ。チュウ。
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