てつこてつ

建築学概論のてつこてつのレビュー・感想・評価

建築学概論(2012年製作の映画)
4.0
約3年ぶりに三度目の視聴。

やっぱり、韓国の正統派ラブストーリーでは一番好きな映画だなあ。

15年もの歳月を経た大学時代の初恋の人との再会、そして二人の関係の行く末を、現在と過去のシーンを交互に見せながら、秘められていたお互いの思いがクライマックスに向けて次第に紐解かれていく丁寧なストーリー展開が実にいい。

特に大学時代の一つ一つのエピソードが、あの年頃の純朴な若者が確かに抱きそうな劣等感であったり、一途な思いがリアルに伝わる。CDプレイヤーさえ持てない母子二人暮らしの主人公が、想いを寄せる女性が、プレイボーイで金持ちの先輩に車内で口説かれる会話の流れを後部座席で寝たふりをしながら耐え忍ぶシーンが印象的。

歳月が流れ一流建築家になった主人公の元を訪ねてきたヒロインの依頼で、彼女の故郷である済州島に建てる家のデザインがとてもモダンだし、広いリビング片側全面ガラスサッシュ越しに広がる大海原の絶景は素晴らしいし、学生時代のシーンで頻繁に登場する主人公が住むソウルのお世辞にも瀟洒とは言えない下町の裏道の夜景を美しく撮り上げるライティングが素晴らしい。

見る度に新しい発見がある作品だが、初見では、大学生とアラフォーという同じキャラクターを別々のキャストが演じるという実に難しい設定になかなか付いていけず共感し難い部分が多かった。

要は、大人になった後の主人公を演じたオム・テウォン、ヒロイン役のハン・ガインと、大学一年生の頃の二人を演じたイ・ジェフンとペ・スジが全く似ていないという印象が強く、少年少女ならまだしも、大学生からアラフォー世代でここまで顔変わらないだろうと・・。

岩井俊二監督の名作「Love Letter」で高校生の酒井美紀が大人になったら中山美穂???ってのが、ストーリーはとても秀逸なのに、唯一最後まで引っかかってしまったのと同じ感覚。

が、三度目の鑑賞では、オム・テウォンとイ・ジェフンには、よくよく見ると似た系統の顔立ちで、確かにイ・ジェフンが年齢を重ね、肌アレルギー体質で若干恰幅が良くなったらオム・テウォンとなってもおかしくないと思わせる程、お互いキャラクター像についてとことん話し合ったのか、実に説得力がある演技を二人ともしているなあと感心させられた。

その一方、ハン・ガインは、ちょっとびっくりするほど大きなクルッとした目が印象的な典型的なアイドル顔の美人(別に似ている訳ではないが、日本の女優で例えると奈々緒並みに印象が強い)であるのに対して、ペ・スジが切れ長の瞳が魅力的なナチュラルビューティーという全く対照的な顔立ちなので、これは整形したんじゃないかくらいの別人。

むしろ、「私、整形したの」という台詞を入れたほうが、あれだけ想いを寄せた初恋の女性に対して、主人公が20年程度の歳月で名前を言われても思い出せないっていう最初の設定に無理がなくて良かったんじゃないかと思ってしまう。

現在と過去のシーンを頻繁に行き来する流れなので、その度にヒロイン役の女優の顔の似ていない感が気になってしまい、これだけは残念ながら三度目の鑑賞でも変わらなかった。

学生時代の主人公の親友を演じていたのが、「EXIT]「スピード・スクワッド」等で今や主演も立派に張るチョ・ジョンソクである事にも初めて気付き、何故かこの浪人学生の役どころの頃のほうが今よりも老けて見えることに驚き。

色んな伏線が張り巡らされており、青春時代と大人になった後の男女の繊細な心の機微をそれぞれ細やかに描いた本当に素敵な作品なのだが、やはり、あそこまで一気に盛り上がったのならば、主人公は最後に別の決断をして欲しかったと思うのは、おそらく全視聴者が思うところ。

これ、別エンディングで日本でリメイクしてほしいと切に思う一本。が、本作同様に、容貌が変わらないであろう微妙な年齢設定の四人の男女のキャスティング問題が大きく立ちはだかるだろうなあ。
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