QRRmoristudio

そして父になるのQRRmoristudioのネタバレレビュー・内容・結末

そして父になる(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

多忙で映画から離れ気味だった。
久々に腰据えてしっかり観た。
是枝選んで正解。観易い。

ケンタのカメラ。あんなん泣くわ。足からのショットとか天才やな。もしかして本当にケンタ役の子に撮らせたのかな。
実はケンタも才能あるんです、みたいなことは本当に全然大した問題じゃないのだけれど、分かり易いカタルシスでやっぱり良かった。こういうことを厭味なく仄めかす感じでできるのが是枝の凄いところだ。

福山雅治家は大体環境光が弱くて影が真っ暗。
対してリリーフランキーの家は全部が明るくて色彩豊か。

問題が発覚してからの状況説明のシーンは螺旋階段を登るのを俯瞰して撮る。正解の無い思考の振幅を表現すると共に説明的なシーンの間伸びを絵の面白さで魅せる役割も果たしている。

最後ケンタくんと話すシーン。上下分岐した平行な道を、高い方がケンタ、低い方が雅治。イニシアチブを表現しつつ、雅治が自認を果たすタイミングで道は合流する。先程まで見上げていたケンタが、雅治の横に並ぶと小さ過ぎて、抱きついてくれる姿に思わず安堵する。

作中一度も上手に弾けないピアノ。
しかし物語を脚色するのは美しいピアノの旋律。
彼らが下手でも彼らの世界の外側には上手にピアノを弾ける人がいる。その事実が世界の外を感じさせて、物語を良い意味で軽くしている気がする。

相変わらず美しい子供の撮り方。
子供は背中を撮ると良いと是枝監督自身がおっしゃっていたのを聞いたことがある。
今回は特にサービスショットだらけだった。

これは多分意図されていたことではないと思うけれど、樹木希林がWiiリモコン振っているシーン、一瞬だけれどとても嬉しかった。あれは実際に遊んでいたように見えた。
少なくともWii触ってから亡くなったのかと思うと、何故だか無性に込み上げてくるものがあった。共通点から地続きの存在だったことを感じ改めてその死を悼む、ということかしら。