Yoshishun

そして父になるのYoshishunのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.0
“血か、時間か“

もし6年間育て続けた我が子が、血の繋がってない他人の子だったら――
カンヌ国際映画祭にてスピルバーグが審査員特別賞に選んだ、家族をテーマにした人間ドラマ。

突然我が子が取り違えられた他人の子だったことがわかったら、という地獄のような展開だが、仕事一筋で完璧人間に育て上げようとする毒親を主軸として描いている。成功にしか縁のないまさに勝ち組ともいえる父だが、唯一不満を抱いていたのが息子の存在である。自分のように完璧にこなせないことに不信感を抱いていたが、自分の子ではないことが発覚した瞬間、「やっぱりか」と口を滑らす。たったこの一言で彼の思い描く理想の息子像とかけ離れていたこと、そして育ててきた時間よりも血を優先する父親であることがわかる。

この不自然な台詞をはじめ、どこか子どもを愛しているというより、ただの息子という冷めた態度を取る。終いには相手の親の気持ちをも考えず、血の繋がっている息子、血は繋がっていないがずっと育ててきた息子の両者を引き取るなどと言い出す。

血の繋がっている本当の息子、血は繋がっていないが6年間育て続けた他人の息子。どちらを愛すべきか、そもそも愛せるのか。そしてどちらも愛してはだめなのか。
その葛藤の果に、仕事一筋な父は、本当の意味で父になる。子どもの取違というハードな内容なのに、何故「そして父になる」という父目線のタイトルなのか。終盤を見れば納得がいく。

肝心の取り違える原因がかなり胸糞に語られていたり、子供の「なんで?」という純粋無垢な問いかけがかなり心臓を抉ってきたりと、生半可な気持ちでは観れない本作。是枝和裕監督は「海街diary」が微妙だったので苦手意識があったが、これは現実に起こりうる問題と親と子の絆という普遍的なテーマに共感しやすかった。
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