賽の河原

そして父になるの賽の河原のレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.1
海街diaryを先に観てしまったんですけど、お恥ずかしい話ながら最近映画2時間通しで観るのって結構辛いというか、途中で飽きたり切ったりとか凄く多いんですけど是枝監督の映画は本当に決定的な何かとかアクションは起こらないんですけど、サスペンス性とかでスゲー引き込まれちゃうんですよね。2時間気づいたら経ってるという。
んで、なんでそうなるかっていうとやっぱり映画的な表現がスゲー上手いってことに尽きるんじゃないですかね。
本作も最初の小学校受験のシーンがあるじゃないですか。そこで説明セリフゼロで「この家はこういう関係性の『家族』です」っていうのがシンプルかつ必要十分に描かれちゃう。
さらに言うとリリーフランキーの家族とのフードコートのシーンとかでこれ以上ないってくらいにシンプルに対比関係が明らかになる。
やっぱり映画は総合芸術なんで小道具とか台詞の端々とかそう言うの読んでるだけでもとても楽しいし、その対比関係が異常なほど鮮やかなので何も起こらなくても、真逆の『家族』が近接するもんだからスリリングなんですよね。ある意味でサスペンス性が成り立っている。
あとは福山雅治の完全無欠さを逆手に取ったあのキャラクターも最高だしハマリ役過ぎる件とかね、子役のコントロールが素晴らしすぎる件とかね。どうやってあんな複雑な表情の演技を子役にさせてるんだよという。ラストシーンの本質的にはすれ違っていた親子が2つの道から1つの道に合流する視覚的演出とか本当によく出来てますね。「出来損ないだったけどパパだったんだよ!」とかあのカメラの写真を見て嗚咽するくだりとか映画的としかいいようのない最高の演出だし、泣きますわこんなん。
この監督がいま日本で最も国際的に評価されてる映画監督の1人だというのは納得だし、このミニマムな演出でデカいテーマを扱えるのは本当に感服しますね。
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