オーデュボン

そして父になるのオーデュボンのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.3
凧揚げ。

父親は大企業に勤め、高層マンションに住み、小学校もお受験の家庭。対するは、あまり仕事にやる気のない父親が経営する電気屋の家庭。ある日、そんな二組の家庭の子供が出産後取り違えられていたことが判明する。

「お父さんとお母さん、どちらに似ていますか?」と尋ねる小学校受験の面接官。淡々と答える親子の描写で幕を開けるが、福山雅治と尾野真千子演じる夫婦の間にはどこかぎこちない雰囲気も漂う。リリーフランキー、真木よう子の夫婦はだらしない父親と強気な母親と、対照的だ。この4人はもちろん、それぞれの子供たちの演技があまりにも自然で、やはり是枝監督の真骨頂とも言うべき子役演出の巧さが光る。
そして、会話シーンの長回しや、影だけを捉えたカットなど、映画的に面白い場面の作り方もさすがといったところ。しかし、奇を衒いすぎて「アート映画」に大きく傾くようなことはなく、バランスの取れた自然な演出はまさに映画の良さ、醍醐味のようなものを表現している。終盤、言葉ではなく写真で感情を揺さぶるシーンは、久々に映画を観ながら号泣してしまった。

子供の取り違えという重いテーマは、全編を通してピアノの音色で彩られる。このピアノであったり、食事のシーン、言葉遣いなど些細な描写で子供達の「育ち」を想起させる演出も本当に映画的で素晴らしい。この映画、内容自体の素晴らしさはもちろんだが、観終わった瞬間タイトルがこれ以上ないパーフェクトなものであることに気づく。血なのか、時間なのか、理想の父親とは。家族についての様々な考え方が描かれるが、そんな定義など意味のないことに気づいた時、彼は本当の父親になったのだと思う。