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ジュラシック・シャークのmotoのレビュー・感想・評価

ジュラシック・シャーク(2012年製作の映画)
5.0
“今まで出会った映画の中でも最も駄作” “サメのいないサメ映画” “高校生の映画クラブの作品だとしたら、今すぐに彼らが映画の道を諦めるように諭すべき” “クソ映画”などと自称を含む世界中の映画評論家達からこき下ろされにこき下ろされまくった名作。

タイトルを見れば世界の駄作映画ファン垂涎は必至であり、そうでない人々にとっても壮大なファンタジーとなり得るのは、想像に難くない。

リリース直後には、期待の声があったものの、結果的には上記のような惨憺たる結果に終わり、IMDbにおいても未だワースト映画ランキングに燦然とその名を輝かせている。

日本では吹替版のみの視聴が可能であるため、監督の表現したかったことを直接英語で汲み取ることができない、海外の無名役者達の気の抜けた演技を楽しむことができない等、一部熱烈な日本人支持者からの苦情が入っているというが、真偽のほどは定かではない。

しかし、吹替の日本語台詞にはかなりの熱が入っており、そのそれっぽさはなだぎ武のビバリーヒルズ青春白書に手が届きそうなレベルである。

これほどの名作の吹替を担うと決意した点からも、受け持った日本側企業の込めた想いが、本作の内容をも遥かに凌駕するほどに深いものであったことが見て取れる。

また、特筆すべきは吹替担当者達を一切の匿名としたことだろう。

これによって単なる名作映画は、現代社会への強烈なメッセージとして昇華する。

映画そのものに対する正当な評価、製作国側の意向に限りなく歩み寄るリアリティの追求を見事にクリアしている点では、昨今の商業主義的映画の在り方に対する警笛と、吹替という異文化の中に生まれた他言語間の架け橋として、成功という言葉すら月並みに聞こえるほどである。

残念ながら、日本では彼らの努力も虚しく、劇場での公開には至らなかったのだが、世界のボリウッドのお膝元であるインドにて劇場公開がなされたことを見ると、彼らの功績の大きさは計り知れない。

この映画に携わった全ての人々が、何を思い、何が為に動いていたのか、彼らの気持ちになって考えてみると、明日が少し変わってくるそんな1本である。
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