ヒロオさん

凶悪のヒロオさんのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
3.4
正義感の強い記者が死刑囚の告白を辿るうちに、さらに大きな真実にたどり着く話。

単にスリラーかと思いきや、正義と悪についてのメッセージ性を感じられる映画だった。
哲学好きに勧めて、面白い解説をしてもらいたい。

構成に関しては、時系列を追って真相が淡々と描写されるだけなので、のっぺりとした印象を受けた。

また、本作のような犯罪者が告白する類の映画にはどんでん返しが多いというMy統計があったので、もう一捻りを期待したが、普通に真相がわかるだけだったので勝手に物足りなさ感じてしまった。
まぁ、実話ベースなのでそうなるか。

特に興味深かったのは、記者がキャラクターとして非常に矛盾を孕んでいたところだった。
正義感に溢れるからこそ、記者は事件を見て見ぬふりすることができず、取材に没頭していく。
一方で、家庭の問題は見て見ぬふりをし、無関心という形の暴力性を妻に突きつけていた。
最後には、正義感が強いがゆえに法律では捌くことのできない罪を許しきれず、被告への殺意を人一倍募らせていた。
こういった矛盾が、本作のキーとなっている気がする。

正義と悪は対極にあるようで、実は延長線上ににあるものだと感じた。
悪は形を変え、意外と身近に湧き上がってくるものなのだと思う。

ピエール瀧とリリーフランキーの演技が怖いし、純粋に上手。
同じ人間だとは思えないほどの残忍さを持ちつつも、情を持ち合わせるところにリアリティを感じた。
ヒロオさん

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