Tig

凶悪のTigのネタバレレビュー・内容・結末

凶悪(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

冷たい熱帯魚である程度耐性ができたのか…目を背けたくなる描写は多々あったものの、じっくり鑑賞できました。

にしてもこんな話が現実にあったかと思うと参ってしまいます。

新潮45の記者が死刑囚の告発を元に闇に葬られようとしていた殺人事件を追求し記事化、最終的に警察が動き立件した上申書殺人事件がベースの映画。

冒頭から瀧演じる須藤によるハードな描写に胸ぐらを掴まれるような思い。怖いんだけど見ちゃう。そして胸糞わるい。
にもかかわらずぶっこんでやるのフレーズには心奪われるという不思議。

山田孝之、ピエール瀧、リリーフランキーというキャスティングが秀逸。というのは多くの方が挙げられている事かと思いますが、個人的には瀧演じる須藤が一番パンチがありました。
ヤクザものの粗暴さ、人情味、狡猾さ、カリスマ性を余すことなく体現した演技にただただ感嘆してしまいました。

リリーフランキーが演じる『先生』も須藤に輪を掛けて極悪な男で、その下劣極まりない言動や立ち居振る舞いに唖然…金の為、私欲の為に暴虐の限りを尽くす様や、務めて淡々とした様子が不快極まりない。ランドセルから札束をだすシーンや、監禁していた男性にスタンガンをくらわす場面は先生の低俗な人間性を際立たせます。

凶悪なのは、正義感から悪人の実態を探っていく中で徐々に偏執的になっていき義憤にかられ肥大化した自己の正義感を事件当事者に押しつけ、いつの間にか真相解明の過程で嬉々としたものを事件に対して見出してしまう藤井のような人間及びジャーナリズムとも解釈できそうな内容ですが、その点だけはなんとなくしっくりこないというか取って付けた感が拭えませんでした。

しかしながら恐ろしくも興味深い作品には変わりなく。観てよかったです。
Tig

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