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凶悪のkekqのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
3.7
個人的に貧乏版「ダークナイト」と位置づけている21世紀日本映画の傑作。電気グルーヴ30周年のピエール瀧の紹介にこの作品が引用されていて、業界内での評価の高さも窺える。この時のピエール瀧は本当に怖い。

「人を殺す→悪いこと」という観念が欠落している人間の強さ。人を殺すと逮捕されることはわかっているので「人に殺させる」ことで解決する合理性。
怒りや怨恨といった動機ではなくビジネスとしての殺人を生業としているが、その実態は映画でみるスマートな殺し屋稼業とは程遠く、庶民の生活に基づいた不細工でギトギトに脂ぎった悪意と不快感に満ちた殺しが繰り広げられる。

一時の勢いと功名心で燃え上がった正義の炎はなんとも弱々しく、その影で犠牲にしたものの大きさがむしろえげつない。池脇千鶴の"こんなはずじゃなかった"不幸の演技は良すぎて吐き気がする。

凶悪な狂気の物語でありながら「ああ、こういう人はたしかにいるな」と思わせる隣近所の日常感が最高に恐ろしい。
ジョーカーの魅力は理詰めでその悪を否定しきれないところにある。
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