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凶悪のSUIのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
4.0
序盤、記者の藤井(山田孝之)が死刑囚の須藤(ピエール瀧)と出会い、事件を調べ始めるあたりまでは割と退屈だけど(つまらなくはない)、回想シーンが始まって先生(リリーフランキー)が出てきてからは怒涛の展開でいやがおうにも引き込まれる。
また、それまでの描写や言動の伏線を回収するような作りもなかなか好みだ。
電気屋の爺さんに酒を飲ませて殺害するシーンなんかの須藤の残虐さや先生の気持ち悪さは圧巻だけど、これが実話を基にしてると思うと胸糞過ぎて面白いといっていいのか迷う。

ジャニーズを筆頭にした見栄えばっかり立派なアイドル俳優を使わず、実力派の役者だけを使っていることも、今作のすごみを演出するのに一役かっている。

ちょっと残念なのは、回想から戻った時点で藤井がすでに後戻りができないほどにのめり込んでしまっていたところ。
その衝撃の事実を垣間見て事件の全容を知っていくにつれ、藤井は事件に魅入られ、徐々に毒されていく…、その段階的な変化の過程が端折られていたのは残念。
山田孝之だったらきっとその繊細な機微まで演じ切れる技量がある、そう思えるだけに尚更だ。

実は今回2度目の鑑賞だが、1度目の時は「退屈だなあと」あまり良い印象を受けなかった。
おそらく当時期待していたもの(きっと派手なバイオレンス)との落差が大きかったのだろう。
しかし今回見返してみてその評価は180度覆った。
先に述べた通り、事実を基にしているだけに安易に面白いといっていいのかわからないが、少なくとも見るだけの価値はある作品だと思えた。
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