竜平

凶悪の竜平のレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
4.2
ある記者が面会することになる死刑囚の男。彼の証言から明らかになっていく一連の殺人事件と、背後に潜む「先生」と呼ばれる男の存在。どんより暗くてずっしり重たい邦画的クライムサスペンス。

フィクションではあるけども実在の事件を基にしてるとのことでまずその重みが物凄い。常軌を逸した、まさにタイトル通りの“凶悪”事件とその裏側。殺人という行為がさも普通のことのように、こうも軽率に行われていくのはなかなかの不快感、なんだけど映画としてはなんとも見入ってしまう内容。いやしかし「人でなし」とはこのこと、中盤に描かれる胸糞エピソードにはマジでずーんとなること請け合い。非人道的な行為はもちろん悪なんだけど、それに関わることになってしまう人たちにも「悪」はじつはあったりして、とことん描かれる人の闇と、それにとどまらず世間や社会の闇までも写し出していく。今作はこのめちゃくちゃ深いテーマというのが素晴らしい。重罪は死をもって償うべきなのか、ではその死を誰が決めていいものか、そこに悪はないのか、とかね。個人的に思ってしまったのは、人にとって「神」ってなんて都合のいい存在なんだろうということ、とまぁ宗教的な話に繋がっちゃうからそこは置いとく。

キャストたちの熱演も光る。とくに主人公である記者を演じる山田孝之の前半と後半での変わり様。鬼気迫るとはこのことかと。事件に取り憑かれ、のめり込んでいく様というのは洋画で言うところの『ゾディアック』的な。ピエール瀧、そしてリリー・フランキーの徹底したクソ野郎っぷりも見どころ。何か重たいものをくらいたい気分のときにオススメな一本。それ以外のときはただただ気分が落ちるからやめとこうね。
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