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3人のアンヌのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3人のアンヌ(2012年製作の映画)
3.8
 ソウルから海辺の港町モハンにやって来た母娘、ペンション「ウェスト・ブルー」のベランダに佇みながら、2人は2日後の妹の旦那の出頭を待ち侘びていた。自分たちのどうにもならない人生を嘆きながら、母親はケーキを食べる。娘で映画学校の学生ウォンジュ(チョン・ユミ)は、ムシャクシャする気持ちを紛らわせようと、フランス人女性アンヌを主人公にした3つの脚本を書き始める。一つ目の成功した映画監督のアンヌ(イザベル・ユペール)は、プロデューサーのジョンス(クォン・ヘヒョ)と彼の身重の妻を引き連れて、この地にやって来ていた。ベルリンでのキスが忘れられないジョンスの求愛を交わし、ライトハウスを探しにやって来たアンヌは、海で泳ぐライフガード(ユ・ジュンサン)を発見する。灯台を探しに来た2人はやがて彼のテントに案内され、そこで求愛の歌をプレゼントされる。夜のバーベキューの席、火おこしの手伝いでやって来たライフガードはアンヌに新しい歌をプレゼントしようとするが、怒ったジョンスに拒絶される。翌日、非礼を詫びにライフガードのテントを訪れたアンヌは、彼に手紙をプレゼントするが、筆記体が読めない彼は「美しい」の綴りが理解出来ない。

 ウォンジュの書いた3人のアンヌは、成功した映画監督、浮気中の人妻、離婚したばかりの女性であり、それぞれ赤・青・緑のワンピースを着ている。ヴァカンスでこの地を訪れた3人のアンヌは、やがてこの地で運命の男ライフガードに出会う。ライトハウスとライフガード、2つの誤読を巡る2人の出会いが、ムシャクシャした女学生のレイヤーで3通りの魅力的な物語として描かれる。その生き生きとしたキャラクターを演じる3通りのアンヌが素晴らしい。ベランダでタバコを吸いながら、気怠い雰囲気を見せる一つ目のアンヌが、イザベル・ユペールのイメージまんまだとしたら、2つ目で黒い羊に「めぇっ」と泣く少女然とした彼女や、旅先で随分あっさりと男に身を委ねる彼女の姿は、イザベル・ユペールという女優の本質さえも揺るがす。浜辺に打ち捨てられた焼酎の小瓶、オーナーから借りた青い傘、オレンジ色のテント、モンブランの万年筆、民俗学の先生と僧との問答の可笑しみ。相変わらず男たちは綺麗な女のケツを追いかけ、他人に嫉妬する。そんな男たちの無様な姿を見ながら、女は精一杯の情で応える。3つのエピソードはそれぞれに様々なカラーの道具立てを媒介としながら、反復と差異を繰り返す。そこにホン・サンス映画の男と女の可笑しさがある。
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