YasujiOshiba

ローマでアモーレのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ローマでアモーレ(2012年製作の映画)
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備忘のために

- アントニオとミリーのエピソードは、どうかんがえてもフェリーニの『白い酋長』へのオマージュ。どちらも田舎からローマに出て来た新婚カップルの話で、フェリーニのほうは、田舎中娘のワンダ(ブルネッラ・ボーヴォ)がフォトロマンツォのスター(アルベルト・ソルディ)に出会い、その旦那(レオポルド・トリエステ)は、ジュリエッタ・マジーナの娼婦に慰められるのよね。それをアレンは独自にアレンジして、ソルディに変わって胡散臭い映画スターを演じるのがアントニ・アルバネーゼを登場させ、マジーナの娼婦役にはお色気たっぷりのペネロペ・クルスを登場させるという趣向。そこに、往年の女優オルネッラ・ムーティや、現代のセクシー男優リッカルド・スカマルチョなんかが絡むのだから、こりゃイタリア映画好きにはたまりませんな。

- ロベルト・ベニーニのエピソードはイタリア風のトルーマンショーかな。けれども、ベニーニ演じるレオポルド・ピサネッロなる人物がそれらしく見えたのはその妻ソフィアを演じたモニカ・ナッポのおかげだと思うな。
ナポリ出身のモニカ・ナッポを、ぼくが初めて見たのはマッテオ・ガッローネの『Estate romana』(2000)だったと思う。それからシルヴィオ・ソルディーニの『Agata e tempesta 』(2004)やフェルザン・オズペテクの『異人たちの棲む館』(2012)なんかで、印象的な脇役を演じて来た女優さん。今回も、彼女の不思議な存在感のおかげで、ベニーニの過剰な演技が浮くことがなかったんじゃないかな。

- アレック・ボールドウィンとジェシー・アイゼンバーグのやりとりも楽しかったな。ボールドウィンは太っちゃったけど、むかしは少しアイゼンバーグに似ていたんじゃなかったっけ。そのアイゼンバーグといえばやっぱり『ゾンビ・ランド』(2009)で、そのころからの飄々とした感じはこの人ならではなんだけど、もしかすると年をとるとボールドウィンみたいになっちまうのかな、なんて思わせるふたりのやりとりだったね。

- それにしても、アレンの演技には笑わせてもらった。それも、オペラの演出家という役どころが実にうまくはまっていたよな。imbecille を褒め言葉と受け取ってしまうところなんて、最高だ。
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